2019.11.11 Mon.

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  銀座4丁目にあるスイスの時計ブランド「ORIS」を訪ねた。田中麻美子社長に、ORISがみんな電力に電気を切り替えた、その背景にあるストーリーを伺うためだ。
 ORISには、イメージキャラクターにハリウッドスターを起用したりする派手さはないが、コマーシャルなキャンペーンに大金を使うなら、環境保全に使おうという思考を軸に持っている。そして根底にある時計づくりは実用的かつ独創的な、本物の機械式時計だけを追求し、時計ライターなど、時計をよく知る層からの評価は特に高い。
 創業から100年を超えるブランドに賛同いただくのは価値のある、とても嬉しいこと。再生可能エネルギーを語る際、常に出てくる「サステナブル」というキーワードを体現している会社からは、むしろ学ばせていただくべき要素が満載だろう。
  Oris Clean Ocean Limited Edition Credit Photo by Caroline Power Watch Reference: 01 733 7732 4185-Set
田中 電気については、東日本大震災で福島の事故があった以前から私は原子力に対してネガティブな想いがありました。でもあれで一気に、世の中の皆さんに「電気ってどうなんだろう」という疑問が湧いたと思います。そして、私は大石社長を以前から存じ上げていたので、再生可能エネルギーを扱われていることは知っていました。
 私個人のことを申しますと、以前いたのがビストリノックスで、会社は自社ビルでしたので、そちらでまずみんな電力を導入しました。そしてORISもビル一棟を借りることができたので、切り替えることができました。大きなビルのテナントに入っていると、そういうことができないことが多々あります。
 ORISは10年以上前から、環境保全活動に参加してきました。ダイバーウォッチが多いので、時計で「グレートバリアリーフ」や「ハンマーヘッドシャーク」など数々のリミテッドエディションを出して、海洋環境がテーマの取り組みをこれまでしてきました。絶滅危惧種やサンゴ礁の保護といったことが主なテーマでした。
01 733 7732 4185-Set - Oris Clean Ocean Limited Edition
ースイス本社が、そういった強い意志をお持ちだった。
田中 真面目な人が多いかもしれません(笑)。「お金をたくさん儲けましょう」、「株価を上げましょう」という、典型的な株主のための企業活動をあまり考えていないというか、どちらかというとそれをよしとしない風潮があると思います。
 特にORISは独立企業で、その「独立している」ということをとても大切にしています。まずそういった真面目さがあり、環境問題は最近特に取り沙汰されることが増えてきましたが、「正しいことをやった方がいいよね」という考え方があります。
 時計やファッションブランドは、マーケティングの手法としてハリウッドのセレブや俳優をアンバサダーにたてることが多いです。もちろんそれにはとてもお金がかかります。そういうお金を使うんだったら、環境保全とか社会貢献にお金を使って、宣伝にはせめてそれを活用し、「一緒に参加しましょう」と呼びかけているのがORISです。
 「この時計を買うと売り上げの一部がここに行くので、あなたもこの支援に参加できますよ」というのが、ORISのマーケティングなんです。その考えの根底には「同じお金だったら、できるだけいいことに使おうよ」ということがあります。
Oris Clean Ocean Limited Edition Credit Photo by Caroline Power Watch Reference: 01 733 7732 4185-Set
ーもともと「スイス」という国と特に繋がりがおありだった?
田中 ビクトリノックス入社は2010年で、スイスとのご縁はそれからです。ビクトリノックスも社会貢献に積極的な会社でしたし、私もそれは同じです。ORISは日本に輸入され始めてから35年ほど経ちますが、ORISジャパンの設立は去年で、まだ日本では小さいんです。
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ービクトリノックスに入った次の年には福島の事故が起きてしまった。
田中 原発のゴミ処理の問題とか、事故が起きた時の対応とか、結局チェルノブイリの頃から、どうしたらいいのか誰もわからない状況です。「事故は起こりません」と皆さん仰るんですが、壊れないものはこの世にないわけで、「事故が起きない」と言うこと自体が大きな嘘ですよね。しかもそれを隠すためにまた違う嘘をつくという、そこは私が若い時から「おかしいだろう」と思っていることでした。これは「どういうことだろう?」と。
 特に日本は災害大国です。世界中の自然災害の約3割が日本で起きていると聞いたことがあります。そんな小さな列島の中に大量の原発をつくるのは、自殺行為なんじゃないかと思うわけです。自然災害じゃなくても、どこかの国に原発を爆撃されたらそれでお終いになってしまうのではないかと、とても怖いです。
 でも、だからといってずっと何らかのアクションをしていたわけではありませんでした。そこで大石社長にお会いして、やっていることを伺って、「素晴らしい」と思ったんです。
ー当時大石は、何について語っておりましたか?
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田中 農家さんが、「私がこの人参をつくりました」と言っているようなことを電気でやってもいいんじゃないかと思ったとか、創業のきっかけとして、電車で自分のスマホの電源が切れかけているとき、前に座っていたかわいらしい女性が小さな携帯用ソーラーパネルを持っていて、「その電気を売って欲しい」と思ったと仰っていて、とても面白いと思いました。「そういうのっていいな」と思ったんです。  素晴らしいお仕事をされているので、とても微力ですが応援したいと思っています。
ースイスの風土を至近距離で見られて、日本社会はどのように目に映っていますか?
田中 これはいいところと紙一重と思うんですが、たいていの日本人は権威を持っている人の言うことを素直に聞くと思います。「世の中こういうものだよ」と言われると、「はい」と疑問を持たない。大勢の人が言ってると「そうだよね」となりがちで、そこにあえて「どうして?」と訊くタイプの人はあんまり好かれなかったりする。私なんかはすぐ「なんで、なんで」と訊くので、面倒くさがられちゃうんです(笑)。
 ハロウィンだってすごく盛り上がるんですが、じゃあ「ハロウィンって何?」と聞いても、たぶん90%以上の人が知らないと思います。何だか知らないのに熱狂するという国民性というか、別の視点で見ると「扇動しやすい」と言えます。だから、そこはすごく危ないと感じます。
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みんな電力はオリスジャパンへ、オリス銀座ブティックのオープン記念としてコースターを贈りました。
このコースターは「シードペーパー」で出来ています。シードペーパーとは、再生紙にさまざまなお花の種をすきこんだ、環境にやさしいリサイクルペーパーです。
コースターを一晩(8時間程度)水につけ、土に植え水やりを続けると、1週間ほどで発芽し、2カ月ほど育てると花が咲きます。忘れな草、ナデシコ、ヒナゲシ、イングリッシュデイジーなど10種類以上の花の種が入っています。

ORIS記事初回、いかがだったでしょうか。全3回の第2回はスイスから日本が学べることについて、来週月曜18日の公開です

 

(取材・文:平井有太)
2019.10.30 Wed.


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