2019.03.25 Mon.

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笑顔で、しかし込められた熱量に引き込まれる話をしてくださった熊野氏。上の写真は、2018年に電力切替を実施したアミタ(株)姫路循環資源製造所

  京都に本社を置くアミタホールディングス株式会社が、電気をみんな電力に切り替えた。そして社員にも、自宅の電気の切り替えを勧めてくれるという。
 約40年間、環境課題・社会課題の解決そのものをビジネスとしてきた先でそのノウハウを統合し、社会革新を目指す企業の支援もしているアミタ。「持続可能な地域創生」、「100%リサイクルサービス」、「『循環』というテクノロジー」といった、再生可能エネルギーにもそのまま当てはまるキーワードを、電力自由化などと社会が言い出すずっと以前から掲げてきた説得力は強い。
 「発展するほどに『自然資本』と『人間関係資本』が増加するような社会づくりを目指す」という、特徴的な言葉を支える哲学は何か。
 アミタグループ代表の熊野英介氏は、「3.11はアミタにとっても大きなきっかけだった」と、話を切り出した。

3.11の翌年に策定したOur Mission㈼

3.11の翌年に策定した「Our MissionⅡ」

熊野 私たちの会社は、3.11を境に大きく変りました。
 3.11までは東京に本社オフィスがあり、そこに180人くらい社員がいたんです。事業として、それは一般的な「集中と効率」みたいなことをイメージしていました。ただあの日、社員を早めに帰らせたにも関わらず、帰宅まで平均で4時間ほどかかったと。そこで大反省して、「便利さと安心は別」だということに改めて気づいたのでした。
 東京という場所は自然資本も見にくいし、人間は多いけど、そこに「関係性があるか」というのは別の話で、「そういう場所に本社があるのはどうか?」とは前々から思っていたんです。
 それに弊社は、お客さまの環境情報を握っている会社なので、「一極集中によるリスクがお客さんにいくのはどうか」という点も改めて考えました。ですので3.11を機に、四方八方の山は見えるし、川にもおりれるしということで、本社を京都に移しました。京都、東京という2つの場所を拠点にすることは、海外に対しても強いメッセージになります。
 また我々の定款には、「自然資本と人間関係資本の増幅に資する事業のみを行う」という言葉があります。これは3.11後の株主総会で、株主の皆さまに約束したことです。
ー自然資本と人間関係資本について、もう少し詳しくお聞かせ願えますか?

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“この世に無駄なものはない”の精神を表す「糞僧衣」について説明くださる、熊野氏

熊野 私たちの会社はもともと、精錬会社に原料と製品を卸す問屋でした。それが第2次オイルショックを受け、価格が少しでも高ければたとえ質の良い商品でも「いらないものはいらない」ということになってしまいました。今はそれが当たり前ですが、当時は製造中心の時代でした。義理という要素もあって、仕入れが大事にされていたんです。
 しかしそれがオイルショックや円高ショックを経て、80年代くらいから消費社会が加速していきます。つまり「いいモノが市場をつくる」という時代から、「市場が欲するものをつくる」という、消費者が中心の時代への移行が起きたんです。となると「欲しいものは何ですか?」という、要望聞きのビジネスモデルをつくらねばならない。その時に出てきた要望が「安くていいモノが欲しい」という、ものすごくワガママなニーズでした(笑)。
 これに対して、「経費を下げたい」ニーズと「いいモノが欲しい」ニーズの均衡点が、産業廃棄物でした。成分分析をすれば、産業廃棄物の方が天然資源よりも原料として優れている。ただ必要なのは「供給の安定化」でした。だから私は自分で現場に入って、量や品質を保証する仕組みをつくったんです。産業廃棄物には処理費がおりますので、それで加工をしました。
 創業以来約40年間、最初から常に私たちの、100%リサイクル事業のコンセプトは「地上の資源を創る」でした。従来のスクラップ屋さんは紙は紙、鉄は鉄という、産業の水平移動だったところを、我々としてはそこで「地下資源を守りたい」と考えました。
 そもそもは人類が「地球の元本」に手を突っ込み、エネルギーも含めて地下資源を掘り出すことから「近代社会」が始まっています。そして近代は「信頼」ではなく、「信用の増幅」をやってきた社会だと思います。
 それによって工業社会は生まれましたが、その時に発生した社会の問題は、「人間も自然も『資産』の欄に含まれていない」ということです。人間も自然も「経費」のところに原料代や人件費として計上されている。つまりは生命が「経費」として捉えられている。私はそこからの離脱が、創業以来の「持続可能な社会を目指す」という目標に繋がると考えています。つまり「近代化の次の社会はできないものか」と、ずっと御託を並べながらやってきたのです。
 事業の根底に流れているのは、「この世には無駄なモノはない」という考え方です。工業社会は「いいモノをより良く」はするけれども、同時に「無駄をつくる増幅装置だ」とも思っています。良いものを選別し、そうではないものに「障害」のラベルを付けていく。つまり、この社会そのものが「障害をつくり出す障害社会だ」と思っていたんです。老いれば誰もが最後は目も耳も不自由になって死んでいくのだから、そこは本質的には「単なる時間軸の話ではないのか」と。
 私は近代が重視する個々の能力やクオリティよりも「人と人との関係性」に重心があるべきと思っています。「優しさ」、「勇気」、「思いやり」といったものは可視化できません。そして「信頼」も、数値化は無理です。

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ーそういった積み重ねの先で、みんな電力を選んでいただけた。
熊野 私ちは電力自由化の波の中で、「関係性由来のエネルギー」が欲しかったんです。
ー繰り返し仰っられている、「人間関係」や「自然」の資本が垣間見えるエネルギーということでしょうか。

1980年代 創業時のメンバー

1980年頃、創業時のメンバー

熊野 0か100ではなくていいけれど、思想や想いが乗っているエネルギーですね。
 私が若い頃に気になっていたのは、スウェーデンにあった「風でつくっているマクドナルド」という店です。そのコンセプトは、当時多くの消費者の支持を得ていたんですが、最初意味がわかりませんでした。それで実際に見に行くと、「ウィンドファームでつくられた電力の証書を買って店を運用しています」と。それはそれで感心したんですが、同時に「何か違うんじゃないか?」とも思いました。
 約20年前、京都議定書があった頃、「持続可能な社会」という言葉が謳われるようになり、環境団体が盛んに「このままではエネルギーがなくなる」と叫んでいました。その時私は、「エネルギーが足りていて幸せなのか?」と思っていました。現代ではエネルギーも食糧も足りているのに「人々は不幸じゃないか」と。
 ちょうどその頃から、日本の自殺者が年間3万人を超える状況が続くわけです。
 そこで私が辿り着いたのは精神的な飢餓貧困、つまり「孤独」でした。そうやって試行錯誤している間に、ちょうど3年前にSDGsが出された。その基本理念には「誰一人取り残さない」とあります。今という時代は、「衣食住が足りて不幸になっている」というのが私の認識です。
 そもそも人間は弱者で生まれて、関係性がないと生存が脅かされるわけです。社会的進化を遂げた動物であるからこそ、そのエゴは「一人になりたくない」と訴えかけてくる。だからこそ「誰一人取り残さない」社会を、我々は目指しています。それはどういうことかと言うと、「関係性が豊かな社会」です。

アミタグループが2017年から主催する企業向け連続研究会_SDGs戦略研究会

アミタグループが2017年から主催する企業向け連続研究会_SDGs戦略研究会

ーそういった理念を、社会の工業化、大量生産、大量消費がどんどん進む中、ここまで曲げることなく来られたことは、特筆に値するような気がします。
熊野 そこは、どうなんでしょう(笑)。あんまり賢くないからと言いますか、迎合できるほど器用じゃない。
ー再エネに関して、社員皆さまの電力切り替えも勧めていこうという取り組みについて、社内からはどのような反応でしたか?
熊野 基本的には自主性に任せています。また、私は「誰一人取り残さない社会」において、「健康な共同体のネットワークをつくるべき」と思っています。地縁だけをベースにするわけではなく、職縁も大切だと思っているんです。その観点から、会社を一つの共同体にしようという試みははじまっていまして、従業員の意思決定を尊重しています。
 弊社は「20世紀型の社会に変える」という目的の実現において、政治による「投票行動」よりも、ビジネスによる「購買行動」が有効だと考えています。「どう時代を変えるのか」と考えた延長線上に、みんな電力さんとの取り組みがあるということです。

アミタ(株)が提供する持続可能な環境認証サービスASC養殖場認証 審査風景

アミタ(株)が提供する持続可能な環境認証サービスASC養殖場認証、審査風景

 

社会を変革する上での「購買行動」の重要さ、つまり「スペンド・シフト」にまで話が及んだところで第一回は終了。
経験に裏打ちされた示唆と学び、そして説得力溢れるアミタ・熊野氏インタビュー、全3回の第2回は4/1の公開です

 

(取材:平井有太)
2018.11.15 thu.


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