2020.08.31 Mon.

  去る7月末のある日、2006年のノーベル平和賞受賞者であり、経済学者であるムハマド・ユヌスさんがみんな電力オフィスの大モニターに登場された。かねがね、ユヌスさんとユヌスさんが設立したグラミン銀行から受けた影響を語ってきた、みんな電力代表・大石英司さんとの対話が実現したのだ。
 「貧困の解消」は、大石さんが創業当初から掲げている事業目的でもある。グラミン銀行とマイクロクレジットはまさに、自国バングラデシュのみならず世界の貧困解決のために広がりつつあり、今回の邂逅は必然だったのかもしれない。
 新型コロナウィルスの問題がなければ現地で会えていたところ、ZOOM越しでの対話が噛み合うか懸念もあった。しかし、事前にしっかりみんな電力という会社について、それこそ「顔が見える」価値がブロックチェーン技術によって実現していることまでも理解くださっていた、ユヌスさん。
 ENECTは全5回で、ユヌスさんのエネルギーについての考察(初回・第2回)、その取り組みを支える哲学的背景(第4回、最終回)、そして協業の可能性まで飛び出した大石さんとの対話(第3回)を、5週にわたり毎記事月曜12時公開で、お伝えする。
ーこのようなかたち(ZOOM)となってしまいましたが、お会いできて大変光栄です。
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Photo: Yunus Centre/Nasir Ali Mamun

ユヌス はい、お元気ですか?そちらの調子は、いかがですか。
ー何より、新型コロナウィルスが増えているのは世界中ほぼ同じ状況だと思います。そして、東京ではずっと雨が止みません。
ユヌス バングラデシュでは今、各地で深刻な洪水が起きています。私たちの住んでいる場所やオフィスは大丈夫ですが、大変な水害です。
ー気候変動の影響はバングラデシュ、日本はもちろん、世界各地で顕著になってきています。加えて、SDGsやESG投資という概念のおかげで企業のエネルギーの切り替えは徐々に増えてきました。しかし、市民の意識が根本から変化するにはまだまだ道のりは遠いように感じます。
 市民が気候変動を認識し、エネルギーのシフトを意識し、実際に行動に移すように促すには、どんなことが有効でしょうか?
ユヌス 日本のような先進国では、市民は気候変動の問題を多かれ少なかれ知っているかと思います。何が原因でそれが起き、その影響でどんな変化がもたらされるのか、特に若者は問題に対して敏感です。その時に最初に突き当たるのがエネルギーです。気候変動の最大の原因は、エネルギーを巡る問題に集約されています。
 中でも、化石燃料は罪深いものです。そしてそのことを認識すれば、他にあるポジティブな選択肢の存在を知ることになります。そこまでくれば、人々は自ら問題に興味を持つようになるでしょう。
 それがただのエネルギーの話では自分自身との繋がりを感じられず、そもそも興味を持たれません。気候変動から話題を展開させ、地球に残された時間はもうそう多くはないことを共有することが大切です。
 今、世界中では人々が路上に出て、気候危機について声をあげています。若者たちは「Fridays For Future」という名のもとに組織化し、ムーヴメントは世界中に飛び火しています。彼らは気候変動の深刻さを知っているのです。  気候変動の観点からは、エネルギー問題が最大の焦点です。誰もが再生可能エネルギーにシフトしたいと思っていますし、その前提があって再エネの機能やシフトがもたらす変化、影響について話し合う機会が生まれます。
 そうなってはじめて問題は自分ごととなり、誰もが興味を持つようになるでしょう。日本が国として何ができるか、個人がエネルギーを切り替えることがどんな変化をもたらすか、そして設備やテクロノロジー不足が原因でエネルギーを切り替えられない人々をどうサポートするか、意識と行動が変わっていくのです。
 だからこそ本当に、あなた方みんな電力のような企業の存在は重要になっていきます。それは「未来に向けたカギになる」という意味において、です。
 今、コロナウィルスによって、環境の問題は世界の最前線に躍り出ました。もう私たちは、自ら率先して地球を破壊しようという以前の世界への後戻りはできません。誰にとっても気候変動の問題は避けて通れなくなった今だからこそ、化石燃料に終止符を打ち、再生可能エネルギー(以下、再エネ)へのシフトについてかつてないほど、声を大にして語らうべきです。
 再エネ自体にも、もう準備ができているといえるでしょう。しかも、すでにあなたたちの手にありますし、さらに高度なレベルで実現させるブロックチェーン技術までお持ちです。化石燃料を終わらせる議論を加速させながら、あなた方が発するメッセージは日本に対してはもちろん、これからの世界に対しても大きな意味と説得力を持つことになります。
ーコロナウイルスも気候変動が原因で出現したということを主張する研究者もいます。
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Photo: Yunus Centre/Nasir Ali Mamun

ユヌス それは科学的知見が必要な領域ですので、もう少し見守る必要があるかもしれません。私たちはまだ、今回の新型ウィルスがどこかの研究所から出てきたのか、コウモリ由来か、猿から伝染したのかわかっていません。
 ただ、わかっている確かなことは、コロナウィルスの出現によって生活や仕事を、これまでの古いやり方から新しいやり方にシフトする必要性が生まれたということです。これまでの産業はストップしました。コロナウィルスがすべてを止めたのです。今後止まった産業を再スタートさせる時こそ、すべてのエネルギーを再エネによって動かさなければなりません。
 今回の事態は、コロナパンデミックが私たちに与えてくれた、またとない契機なのです。

世界的なコロナ禍、さらには自国が大変な水害に見舞われている最中にいただいた、貴重な時間。それでもユヌスさんは
しごく前向きに、この未曾有の事態をポジティブに転換させるため尽力中と感じました。次回は9/7(月)、お楽しみに!
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(通訳:鈴木敬子/構成:平井有太)
2020.07.28 tue.


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