2019.04.22 Mon.

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中島さんは本年4月に副知事を退任され環境省に戻られてしまったため、貴重な一枚かもしれない

  再生可能エネルギーの可能性と機能を、「何より『地域の活性化に繋がる』こと」と仰る中島元長野県副知事。経産省、環境省、環境庁、エネルギー庁と、日本のエネルギー最前線に常に身を置き、様々な取り組みを至近距離で見てきた言葉に宿る説得力は強い。
 その環境省で、省をあげて推進しているのが「地域循環共生圏」。
 それは地域の中で資源やエネルギーを循環させ、自立した地域づくりを進めていきながら、都市と農村で関係を構築し、地域の環境、経済、社会を統合的に向上させる取り組みという。それはまさにみんな電力にとっての大切なキーワード、「富の分散化」との共通項ではないか。
 ぜひ聞きたいのは、どうのように日本における再エネの低い優先順位を向上できるのか。明るい未来への道筋はここにある。

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ー低い優先順位は、どうやると高められるんでしょうか?
中島 一つには、これは国の話になってしまいますが、電力自由化の中で送電の系統運用は一応外部の第三者の送電会社がやることになっています。今までは電力会社ごとにやっていた系統運用を、電力会社から切り離してやれるように送電専門の系統会社をつくったというのは、大きな話です。
 そういう中で、とはいえ電力会社管内で需給バランスをとる仕組みはありつつ、なるべく国内における大きな系統の中で運用する仕組みをつくっていけるか。そこは今、少しずつでも広がっていっていると思います。ですから、その部分に関しては国の今後の施策の動きを見ていく必要があると思います。ただ、原子力の問題も難しい。
 今や原発を動かすことにさえ反発もある中で、私が期待するのは、電力自由化の中で中立的な機関が運用する時に、なるべく再生可能エネルギーのことを考えた運用ができる仕組みにしてもらうということですね。
ーあえて伺うと、再生可能エネルギーが普及することでどんないいことがあるのでしょう?

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中島 地域との関係で言うと、地域環境と調和しながらの再エネは普及すべきだと思います。
 太陽光については、森林を伐採したりするかたちではなく、なるべく空いたスペースや既存の建物を使ってということが好ましいです。そしてなるべく「地域主導型」で、地域の事業者が地域の資金と技術を使って発電する。そして、そういう地域にキチッと利益と知識が還元されるような再生可能エネルギーは、増えていくべきだと思っています。
 そこは環境だけではなくて、SDGs的な視点で、もちろん一つには気候変動ということ。また、「地域主導」と申し上げているのは、利益はキチッと地域に還元される。つまり、地域の事業者が地域の資金で発電事業をやっていくことでお金が地域に還元され、それこそまさに「相乗りくん」がそうですが、地域住民が関わることで繋がりが創生されエンパワーメントされていく。そこには、社会的な部分も含めて、化石燃料とは違う意義があるかと思います。
 化石燃料の場合は、市民や普通の民間企業が事業をすることはほぼ不可能です。だからそうではなくて、自分たちのエネルギーは自分たちでつくって自分たちで使っていくと。そういった「コミュニティをエンパワーメントする」という意味で、再生可能エネルギーには大切な意義と機能があると考えています。
ー地方都市が中央に依存しない、地域の自立に直結するきっかけになるのがエネルギー。
中島 電気は、もちろん簡単ではありませんが、長野県でも中山間地であれば自給率をもっと高められる可能性があります。私が住んでいるのも長野県の富士見町なんですが、そこでやっている実践もあります。
 私は東日本大震災の時に、「もしも同じことがここで起きたらどうなるんだろう?」と思いつつ、一方で「安心だな」と思いました。長野県ですと、地域でも個人レベルでも、自立しようと思えば自立ができるんです。
 今、自宅では太陽光と太陽熱、薪ストーブに薪風呂を使っています。熱に関して、まず薪はたくさん蓄えてありますし、昼間の電気は太陽光で晴れてさえいればいけますし、あとは安価で高性能な蓄電池さえできてくればもう大丈夫です。私は東京にも家があったのですが、自立型の生活は東京では本当に難しいです。
ー東京でできないことが、長野でならできる。
中島 むしろ、このように農山村の多い長野県だからこそ、レジリエントな地域、ライフスタイルをつくっていくことで災害対策にもなりますし、そもそも「豊かな暮らしができるんじゃないか」と思います。
ーそもそも長野県に来られた目的が、そういった「豊かな」生活を求めてだったんでしょうか?

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                   長野と言えば諏訪の御柱際。写真左下はホンモノ御柱の輪切り

中島 一つにはそれがありました。
 私は環境省でずっと仕事をしていて、自分が環境に優しい生活をしていないのに環境行政で環境政策をつくっているということに矛盾を感じていました。だって、自分自身で環境に優しい暮らしがしたくて環境省に入ったわけです。しかもエネルギーや紙はどんどん使って、自分も楽しくないし、「田舎に行きたいな」と思っていたところ、たまたま結婚した相手が富士見町で有機農業をしていた人でした。
 そこで結婚した理由の一つが、「長野県でだったら環境に優しい暮らしができるかもしれない」と思って、そういう実践をしながら環境行政に関わりたいと考えました。
 ポイントは食とエネルギー、そして住宅の自給もできるかもということでした。そして実際に10年以上かけながら、今の時点でガソリンは抜いて、熱と電気だけですと300%は自給できています。太陽光で3キロワットですが、日照率も高いので、だいたい使用量の3倍くらい。ガスは付けていなくて、熱は全部太陽熱と薪風呂で自給できています。
 薪をとってくる夫の人件費は入れていませんが(笑)、ランニングコストもとても低く収まっています。これは、東京では無理ですね。
ー環境省職員の鏡ではないでしょうか(笑)。
中島 ですから、今回のみんな電力さんのようなかたちで「せめて電気は再エネで、地方から購入する」ということでも、可能性はありますよね。
 以前、ブレインストーミング的に他県の方と議論をしていたことがあるんですが、系統の問題で、例えば風力発電のエネルギーは東北では繋げることができません。ただ、もし、30分同時同量でキチッと需要と受給のバランスがとれればそれは違ってくると思います。そういうところでは、風力の電気を持っているところと水力や他の電力を持っているところを連携すれば、風力や水力を持つ自治体同士がさらに発展させられるかもしれません。
 もちろん技術的にも研究の余地はありますが、これは長野県に限ったことではなく、系統制約がある地域の自治体が今後新しい電力を入れたい時、他県で調整できる電源を持っているところと連携することで、エネルギーを入れられる可能性が出てくるかもしれません。

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長野県庁一階のモニターでは、高遠ダムでの水力発電を解説する映像が流れていた

ー県庁の一階でも、県の再エネの取り組みについての映像が流されていました。県民や関係者からの反響はどのようなものですか?
中島 世田谷区との取り組みについては、私もよくいろいろな講演などで発表していますが、特に都会の自治体からは反応があります。企業でも、RE100みたいな動きが出てきているので、関心は高いかなと思います。
 皆さん再生可能エネルギーへの可能性は感じている中で、県の企業局の方でも、子ども向けの環境教育はかなりやっていますので、それは各方面からいい反応をいただいています。一定のニーズがあることを感じます。

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画期的だった長野県から世田谷区の保育園への電力供給実現も、中島さんの存在あってこそ。保育園数も増えています。
エネルギーの本質にまで話が及んだインタビュー、GWを挟んで5/7(火)公開の最終回もどうかお楽しみに

 

(取材:平井有太)
2019.3.4 mon.


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