2017.09.19 Tue.

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会社のショールームにて、専務取締役/CSR室長の原田千秋さん、代表取締役の原田六次郎さん

  大阪に拠点を構える老舗の製紙会社がなぜ「最先端の取り組み=電力の切り替え」に積極的なのか、核心に迫るやりとりが続きます。
 では、1日2000トンの水を使う会社だけが、環境について考えなければいけないのか?
 本当は、私たち一人一人の日々の積み重ねが、ある一つの中小企業の取り組みよりも有力なことを、私たちは知っています。山陽製紙は、未来を先駆けたロールモデルとして、私たちにあるべき姿を見せてくれているようにも思えます。
 昨今は特に、世界各地の異常気象を通じ、私たちが疲弊させた地球環境の状態を感じることが多くなりました。では今から、何から、できるのか。
 ヒントが詰まった山陽製紙インタビュー、最終回をお届けします。
—改めて御社の企業理念について、もう少し根底にある想いをお聞きかせ願えますか?
代表 そこは、専務から(笑)。
専務 創設50周年の節目というと、私たちも自然と過去を振り返るわけです。そして逆に、未来の50年を考えるようになります。その時、「製紙会社って残っているかな」という自分への問いに、純粋に「残ってないだろう」と思ったんですね。なぜかというと、これだけエネルギーを使い、水を使い、他にも大量のいろいろなものを使いながら使い捨ての紙をつくるなんていうのは絶対ありえない、、50年後を考えたら「ないな」と思ったんです。
 でも我が社は製紙会社であって、それならまず少なくとも環境に配慮した会社にならないと、10年後にすら残ってないんじゃないか。そういうイメージしかありませんでした。
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山陽製紙では紙1トンにつき100トンの水を必要とし、工場のマシーンは平日24時間稼働し続けるという

—そのイメージを持つようになる、何か明確なきっかけはありましたか?
専務 そもそもこういう田舎に暮らしていることもありますし、私個人的にはバイオミミクリー(生物模倣)に関係する本を読んでいたりしていました。ですから、「自然から学んでいく」ということが大切だという考えが土台にあるのかもしれません。
 スウェーデンに行ったこともあって、現地でカール=ヘンリック(・ロベール)博士にもお目にかかっています。その時に「バックキャスティングで考えるんだよ」、「未来から今を見たら、今何をすべきかはわかるよね」といったこと、また「その未来にあなたの会社はありますか?」といったお話を伺ったんです。博士とは「経営理念を形にしよう」という取り組みの中で、環境立国スウェーデンを訪れる際に知人から紹介されてご縁をいただきました。
—原田さんは3代目と伺っています。山陽製紙は、創業者から理念ありきの経営をされてきたんでしょうか?
代表 当時の社訓なんかは今も残っていますが、まだ「環境」などという意識はなかったと思います。それよりも社員をまとめるための大義を掲げて、それを大事にしてきたんだと思います。環境については、特に私の代で世界的な問題となってきましたので。
専務 定年退職されたOBさんたちが毎年4月に集まってくれて、社長から会社の1年を報告するOB会を開催しています。年齢が80、90になっても会社のことを心配してくれるOBさんがたくさんいらっしゃって、「やっぱりこの会社は続けていかないと。喜んでいただけるようにしないと」と、つくづく思います。
代表 本当にありがたいことです。社風を先輩の方々がつくってこられて、それを職場の皆さんが、代々受け継いでくれています。
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山陽製紙では排水の処理設備にも3億円を投資しているが、電力と環境の関係については、その自由化まで意識していなかった

—電力以外の、御社ならではの取り組みがあれば、教えていただけますか。
代表 そもそもの本業は、古紙のリサイクルです。そういった強み、技術を活かしながら、しかも小ロットで生産ができる。あとは、紙の中に製造副産物をすき込む技術も培われています。例えば南高梅の種、今までは海に捨てるだけの廃棄物だったものや、他にも炭の入った紙、それを使った商品開発もしています。
 他には、紙でエコする「KAMIDECO(カミデコ)」というんですが、オフィスのコピー用紙は、一般的には捨てるかシュレッダーにかけるかくらいが普通だと思います。それが段ボールくらいですと「古紙回収」の意識もありますが、オフィスの紙となると、リサイクルの意識があまりない。でもその、意識ないまま処分されている紙の量はかなりのものです。そこで我が社は、それをリサイクルするために会員になっていただき、会員さん何人かで集まって1ロットをつくり、それを名刺や封筒にして、再度販売するという新しい仕組みをはじめています。
—すでにみんな電力の事務所にも、山陽製紙さんに送る用の箱があります。
代表 これは電力の自由化もそうですが、一遍には変わらないものだとは思っています。とはいえ「どんどん動いて、積み重ねていくこと」が大事だという意識を持っています。今、社会全体もそちらの方向に動いていることは感じています。
専務 もちろん私たちも、ビジネスなんです。「経営理念をちゃんと戦略に落とし込まないと」ということで、いろいろな新商品も考えています。そして新商品をつくればそれを広く知っていただくことが必要で、時々はいろんな人が集まるところでお話しもさせていただいています。すると、その中から必ず、もちろんほんの一部からですが、「いいことやってるね」と共感してくださる方がいます。
 そこでKAMIDECOの話をして、「今までただ捨てるだけだったコピー用紙を当社に送ってくだされば、それが名刺や封筒になって帰ってくるのであれば、嬉しいですよね」ということに反応されて、すぐ会員になってくださる方もいます。または、興味を持ってくださるんですが、後から電話がかかってきて「コピー用紙の郵送は元払い」ということをお伝えすると「なんだ、そうか」と、切られてしまうこともあります(笑)。反応は本当にいろいろです。
 でも、共感いただける方はだんだん増えている実感はあります。だからこそ、もっときちんと伝えられるように、そして「サービスを良くしないといけない」と思っています。
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ショールームに並べられた、再生紙をつかった、ピクニック用シート。温かみある素材に、様々な柄がある

—電力については、自由化を受けて実際に切り替えたのが人口の約5%といわれています。でも、そこをただ悲観するわけでもない。
専務 それはSDGsだって、日本だとただ素通りしてしまいそうな雰囲気もあります。
代表 CSRの話をするような場でも、SDGsに関しては「はて?」という方が大半ですし、日本ではもっともっと僕らが勉強して、「伝えていかなあかん」と思います。
 でも、一人の力ではなかなかできないと思うんですが、例えば中小企業家同友会という、全部で5万社ほども登録している会があって、そこにも環境部会があるんです。私はそこでエネルギーシフトの話や我が社の環境への取り組みを報告したりしているので、そうやって輪は徐々に広がっていくのかなと感じています。つまり一人の力じゃなしに、草の根的に、「中小企業なら、中小企業だからこそできることがあるんじゃないか」と思うんです。
専務 この間、大手とやりとりされている大きな古紙問屋さんにお邪魔したんですが、たぶん、事前に私たちのことを調べられたんだと思うんです。打ち合わせの際に、「おたくのホームページは製紙会社とは思えないページですね」と言われました(笑)。私たちはいつもこの調子ですので、そういう風に業界の方からは見られているのかもしれません。
 そしてその古紙問屋さんも、私たちの話を聞いて、最後には「工場見学に来たい」という風に仰ってくださって、世の中の変化を肌で感じています。
—社長を目の前にして言い難いこともあるかもしれませんが、社員さんの感覚としては、いかがですか?

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取材途中から、電力切り替えの現場担当である購買部門・小南昭太郎部長も参加してくださった

小南 確かに、会社には若い人も入ってきていますし、そういった子たちも、ある意味でとても素直な考えをもった子たちであったりします。
代表 今年の新卒の一人は、「我が社の理念に共感した」ということで、わざわざ大手企業を蹴って入社してくれているんですね。ですから、私たちがやってきていることが少しずつでも、若い世代に理解されていっているのかもしれません。
 再生紙のプロジェクトで、昨年から始めたものがあります。ウチの若手社員が「出前授業」ということで、先生として小学校に出向いていくんです。去年はそこで生徒たちにミッションを与えて、「ウチの紙で何ができるか」ということで皆さんにアイディアを出してもらいました。そしてその後、工場にも来てもらって、紙が再生される過程を熱心に見学してくれて。そういったことも、どこかで自然に対する意識に繋がっていってくれるかなと思います。
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再生紙を利用した、様々なアイディア商品が並ぶ

—今後、さらに新たな取り組みは考えられているんですか?
代表 今一番重きをおいているのは、KAMIDECOの事業ですね。それに、みんな電力さんの電気も広めたいという気持ちもあるので、そこはお互い、私たちも今、会員さんを1万社目指して頑張っています。現時点ではまだ150社くらいですので、あと約100倍(笑)。でもそれが1万までいけば、やっと「意識も変わっていくかな」と考えています。
 「紙は再生できるんだから」ということで、今後どんどん分別されていくでしょう。そうやって紙ゴミを減らしていく、それを一つの柱となるように「頑張っていきたいな」と。
専務 純粋な紙の再生にさらに付加価値を加えて、「自然エネルギーでつくられた再生紙」というのは、やっぱりいいですよね。今後是非、そういう風にアピールしていきたいと思っています。
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(取材:平井有太)
2017.06.28 wed.


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