2018.06.18 Mon.

DSC06401

小出社長の胸には、今やプレミアがついて高値で売買されているという、SDGsバッジが

  「RE100」宣言をすることで、企業として社会と社員に伝えられること、地域に還元できること、その他苦労や工夫について語ってくださった、ワタミファーム&エナジー・小出浩平社長。しかしとても近い未来に、どうやらこれは「やるべきこと」から「やらねばならぬこと」になりそうだ。
 どの業界にも「ファースト・ペンギン」は重要で、社会はいつもその動向を注視しながら、だんだんと推移していく。環境問題においてもう一つの世界的キーワードであるSDGsの力も借りながら、店舗にも気づきのきっかけを散りばめながら、人々の想いを喚起していくワタミ。
 変革のきっかけは日常のあらゆるところにあることを、それこそ丁寧に伝えてくださった小出社長。インタビュー最終回は、RE100宣言をしないことで、将来的に企業のビジネスが立ち行かなくなる可能性から、伺いました。

DSC06349
ーグローバル企業は特にそうでしょうか?
小出 そうなっていくと思いますし、それが1次、2次の下請けでも、そういう時代になっていくんじゃないかと思います。ですから今後、宣言することは自らの事業を継続していく上で必須になっていくのかなと。あとは目標年次を2030にするか、2050ということがありますが、そもそも先進国では「2050年にはCO2を80%削減しよう」ということが国際合意されています。
 つまり今すでに、おのずと「やらざるをえないこと」ですから、問題はそれを今からやるか、ギリギリになって焦ってやるかだけの話だけだと思っています。
 ワタミも加盟させていただいているエコ・ファースト企業の集まり、外食企業の顔をそろえるような機会では「宣言されたんですね」と言われることも増えてきました。
 日本では上場企業が1%くらいで、残り99%は中小企業です。上場企業は数にすると約3500社ほどだったと思いますが、リーディング・カンパニーがこういうことをやっているのもいいけど、日本でRE100宣言をしている6社の中で、最も事業規模が小さいのはワタミかと思います。1000億程度の売上げで、「それくらいでもできるんだ」という、よき前例になれたらと思っています。「売上げが数兆円の会社が加盟しました!」となると、なかなかハードルも高いですよね。
 ワタミではISO14000を、1999年に外食産業で初めて認証を受けまして、当時の年商はまだ250億円ほどでした。その宣言には、ISO14000の認証を受けるため当時はスイスから審査委員に来てもらって、約3000万円の費用がかかりました。そしてその後、日経産業新聞に、「ワタミでISO14000を受審しました。ノウハウは提供しますので同業他社さん、一緒にやりませんか」という1面広告を出しました。
 それは当時から、「他の企業を啓発して」ということを、グループのカルチャーとしてやってきたということです。ですからRE100にしても、他の会社さんも関心を持ってくれて「ワタミにできるんだったらウチもやろう」となってもらえたらいいと思います。
ー御社内からは「RE100宣言します」と最初に言った時、反対意見は出たんでしょうか?
DSC06389
小出 出たのは、「わざわざ宣言する必要あるのか?」ということでした。実際に取り組んでるんだから、あえて宣言するのはどうかという意見はありました。
 ワタミ社員は今、名刺に「ISO14000」と「エコ・ファースト」、あと「FSC認証の紙使ってます」というロゴを入れさせてもらっています。そこにやっぱり「RE100」を加えて、それは社員の意識喚起に使えるし、現在パートさんやアルバイトさんには1万人近く働いていただいています。その方々が「へー」と思ってご家族に話したり、口コミで広がっていくイメージを説明して「じゃあ、やるか」ということになりました。
ー飲食業会におけるRE100宣言は新鮮な気がします。お客さまへのアピール方法は、考えられていますか?
DSC06374
小出 今ちょうどプロジェクトとして、SDGsがあって、その「7番の目標は再エネにしよう」という風に位置付けていく話はしています。6月は株主総会で、そのタイミングで「SDGsに力を入れていきます」ということと、それにひも付けてグループとしては「CSV企業になっていこう」という大きな目標を掲げています。
 そんな流れの中で、SDGsの中において「この項目がRE100なんだ」ということをお店でもアピールしたり、パネルをつくったりしていこうかなと考えています。
 そして、そこに力を入れていく時に気をつけているのは、そこが再エネだけだと「小出さん頑張って。応援してるから」という、ある意味みんなとは別の世界の話になってしまうかなと。でも、その時の軸をSDGsとすれば、例えば、ワタミではお食事会をやっています。
 その食事会は、例えばお客さまのお身体や精神に障害がある場合、居酒屋での食事そのものが大変だったりすると思うんです。それを、障害を持ったお子さんたちや、大人の方々にはお酒も出しますし、メニューもちゃんと普通と変わらないサービスを揃えさせていただくと、皆さんとても喜んでくださいます。それは、SDGsでいうところの11番ですね。
 ですから、他人事とならない工夫として、グループ内では「私のSDGs宣言」みたいなイメージで話を進めています。そうなると「私は再生可能エネルギーをやる」、「私は森を」、「私はお食事会」と、それぞれが宣言していくことになります。まず、そういう姿勢を社内に広めて、その先でお客さまに自然と伝わっていくというような流れをつくっていければと思っています。
 現在ワタミには年間15〜1600万人、お客さんが来てくださいます。もちろん重複している方々もいらっしゃいますが、店舗でそういう展示物を見て「あれ、何これ?」と思ってくだされば、それはそれでインパクトがあるのではないでしょうか。
DSC06337  さらにワタミでは毎日、高齢者の方に23万食のお弁当を配達させていただいています。それは居酒屋の外食と同じ「事業の柱」という位置付けで、その時にやっぱり社員一人一人が自分の言葉で語れるよう、お客さまにお伝えできるようになればと思うんです。
 もちろん日本社会におけるハードルはあります。でも、そこには私がワタミへの入社を決めた大きな理由の一つがあります。当時は店舗数が600くらい、お客さまも年間3000万人くらいが来てくれていました。
 その3000万人が一人1万円を出してくれたとしたら、3000億円です。「3000億円あったら風車が600基建つ。すごい可能性だ」と思いましたし、それでこそ共感を生み出すことができるんじゃないかと思ったんです。
ー大多数の方々は無関心で、外食業はそういった無関心層に出会うチャンスが大きい業務形態と思います。
DSC06326
小出 実際にワタミファーム&エナジーから電力を供給されている店舗もあるので、そうすると自然エネルギーのアピールも普通にできるようになります。だいたいはテナントビルに入っているので供給できない店舗の方が多いですが、それでも電力は今、450店舗中の50くらいに供給できています。
 いい例として、お店には「森のカクテル」というものがあります。それを呑んでいただくと、売上げから10円が森のNGOに寄付されるんですが、そのカクテルを通じて年間120〜130万円の寄付が実現しています。ということは、1500万人のうち1%くらいの方が注文くださっているということです。
 ですから「無関心層が多い」とは言いながら、そういった「寄付付き商品を頼む方がいらっしゃるんだな」という事実に希望を感じてもいます。もちろん、だからといってカクテルが1杯1000円では誰も買いません。でも、「通常399円のものが450円くらいだと買ってくださるんだな」という実感はあります。
 ですから、私の中では伝え方さえうまくやれれば、皆さんの共感を集めることはできるのだなと思っているんです。
DSC06403

 

居酒屋「ワタミ」の頼もしいRE100宣言、いかがでしたでしょうか。
来週は、描かれたエコなライフスタイルが予想外かつ、考えれば腑に落ちるドキュメンタリー映画の紹介です

 

(取材:平井有太)
2017.4.27 fri.


|