2018.06.11 Mon.

DSC06360
  世界で初めて、外食業界から「RE100」宣言をしたワタミ。ENECTはその宣言までを社内で牽引された、ワタミファーム&エナジー株式会社・小出浩平社長に迫った。
 確かにコストダウンが最初のきっかけかもしれなくても、その最終的なモチベーションには体験を通じた、理屈や言葉を超えた「共感」がある。
 関わる地域の方々、そして自社の社員たちと体験と喜びの共感はできた。もし、この地球を脅かす気候変動の影響の下、そもそもRE100宣言をしていなければ、ビジネスが立ち行かなくなる未来がきてしまうかもしれない。
 ワタミの居酒屋に立ち寄った時、自然環境を持続可能なものとする、小出社長の想いが具現化した取り組みを、そこかしこで見つけることができるだろう。
DSC06328
ー手応えは、実際のところいかがでしたか?
小出 ワタミに来てなかったら「こんなことできてなかったな」と思うことが、多々あります。それは「風車をやる」とか「太陽光をやる」といったことから、林業にしても九州の大分県臼杵市では400ヘクタールほど、ご縁をいただいた自治体でやらせていただいています。
ー電力自由化は、蓋を開けてみれば、その実現から丸2年経っても切り替えは人口の1割というのが実情です。どう見られていますか?
DSC06399
小出 それこそ今回、経営会議での承認を経て「RE100」宣言させていただきましたが、まだまだ「社会として足りない」ということは常日頃感じています。
 ワタミの理念の中には、「メラキアの法則」というものもあるんですね。それは「諦め」の反対で、「諦めなければ夢は叶う」ということです。ただもちろん、現場ではどうしてもまず売り上げが重視されます。これは事業会社であれば当たり前のことと思います。そこを現場のメンバーに理解してもらうために働きかけをしていますが、全部が全部上手くいっているというわけではありません。しかし社内で私は「風車のおじさん」、「環境の小出さん」ということで親しみを込めて認識されています。
 ですから、ガチャガチャといろいろやろうとするのは最初から前提で、うまく伝わりさえすれば、まず会社自体がよくなります。つまり「エコ」になりますし、それが「ワタミがやってるんだったら、ウチもやろう」という社会の流れになってくれれば、「本当に変わるんじゃないのかな?」と思っています。世界のエネルギーの潮流から「どうしちゃったの、日本は?」という状況はまだまだあると思いますが、諦めずにやりたいと思っています。
ー今までされてきたことの中から、より伝わる方法、「このやり方だと、皆さん実際に変わってくれた」という手応えがあったのは、どのようなやり方でしょう?
DSC06373
小出 やはり第一に「コストダウンに繋がるよ」というのは、初動として有効です。
 あとは、ボランティア活動だからこそ自発性が重要なんですが、日本には5万団体ほどNPOがあります。そしてたぶん、一般的な大企業のサラリーマンがNPO活動をやっているかというと、本当に僅かです。かたやフィンランドは人口が日本の20分の1なのに、NPOの数は倍あります。つまり、歴史の違いはあるにせよ「自分にできることは自分がやる」、「地域のことは地域でやる」ということがヨーロッパには根付いています。
 そういう意味では、入り口はコスト削減ですが、その次に必要なのは共感や体験、ほんの少し背中を押すような仕掛けというか、取り組み方かなと思います。
 今、私たちは各地の地域エネルギー会社を応援するような事業をはじめています。
ーワタミさんのお名前はTOKYO油電力さん、南相馬市の野馬土さんからお聞きしています。
DSC06341
小出 私は入社して9年が経ち、経営理念をほぼ諳んじられるわけですが、その中の一番好きな一節に「100年先から見た経営をする」という言葉があります。それは「100年先から問われるのは数値の多寡ではなく、いかに存在し、いかにまわりによりよい影響を与えたかだ」と続きます。そういったグループ憲章の下、我々はたとえ薄利でも地域電力を応援したいと思っています。
 岐阜県の美濃市は人口2万人くらいの街ですが、ご縁があり、また地域のリーダーに熱意もあり、昨年にみの市民エネルギーが立ち上がりました。その時は、まず「ワタミにご支援させていただくと、これくらいのコストダウンになります」というようなお話をさせていただき、試しに商工会議所の会頭さんの会社の見積もりを、比較のため、他に4社さんからとっていただきました。
 その時の会議では地域電力についての説明をさせていただいて、その後に聞いたお話ですと、結果として一番安いのはワタミではなかったと。ですから、普通のコスト勝負であれば負けていたわけです。でもそこで、他の幹部さんたちの前で会頭さんは「私はワタミさんから買う」と。「ここまで通ってくださって、単なる価格でなく『地域の活性化に繋がる』ということ。ワタミさんと一緒にやることで、この地域が元気になる」と仰ってくださいました。
 つまり、感動できて、共感できる空間がそこにあったんです。そしてそれが次のステップとして、その美濃のお酒をワタミで扱わせていただくということに繋がってきています。
 ですから、いつも最初は少し難しいところもあります。でも、そこから次に繋がっていくのに何が有効かと問われれば、それは「共感」かなと思っています。
ーRE100宣言をされて、他の企業に伝えたい宣言をするメリット、入る上での課題の乗り越え方、入ることで切り拓ける未来はありますか?
DSC06385
小出 今こうやって取材をしていただいていることもそうですし、取材は他に新聞社も数社きています。
 ワタミでは5月中旬に創業祭をやりますが、そこで社員のみんなに「こういう風に宣言したよ」、「これに加盟して、その理由はこういうことなんだよ」ということを、もちろん幹部にはすでに伝えていますが、そこは全社員が集まる会ですので、伝えることになります。
 その時に、社員が「自分の所属しているワタミって、結構いい会社じゃない」と思えるようなインパクトが出せると思っています。今回の宣言は、みんなが会社を「誇れる存在」と思ってくれるために必要だと思います。
 もう一つは、今取材を受けているように広報的な要素、そして恐らく最後の3点目として、これは中長期的な要素ですが、私は先日もご縁あってRICOHさんと議論させていただきました。
 今、RE100に宣言しているのは全世界で120社くらいです。そして、宣言をした会社によっては取引先には、商談として「取り組んでください」ということが条件としてきていると。ですから、最初の2点は社員のモチベーション、広報や露出のチャンスということでしたが、3点目として、もう「宣言しないと、ビジネスチャンスがどんどんなくなってしまう」ということがあるんだと思います。
DSC06353

 

誰もが知る居酒屋、あの「ワタミ」のRE100宣言、情熱的な小出社長のお話、残す最終回は来週月曜の公開です

 

(取材:平井有太)
2017.4.27 fri.


|