2018.02.16 Fri.

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「カベラボ」用の壁紙を印刷する、インクジェットプリンター

  「見える化」と「多能工化」、そしてM&Aの相乗効果について語られる、株式会社アサプリホールディングス・松岡祐司代表取締役。印刷業界における「戦わずして勝つ」戦略とご自身のイズムは、社員たちにも確実に浸透している。それは、「本当の優しさ」は「厳しく育てることの賜物」という確信が、その根拠にあってこそだ。

 再生可能エネルギー事業を始めたのは、ある意味でM&Aの副産物だった。しかしそこには、事業に活かせるブランディングの要素があったし、だからといってその上であぐらをかくわけでもない。

 「利益はお客様の満足度」であり、さらにいいモノを提供していくための「お客様からの預かり品」と語る松岡氏。研ぎ澄まされた合理性と、昔ながらの泥臭さを持ち合わせた手腕から、学ぶことは多かった。


 「再生」と「持続」の根幹を支えるお話、一人でも多くの方々に届きますよう。
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ーこういったシステムの導入はいつからですか?
 システムそのものは20年ほど前からずっとつくってきて、自作の手書き伝票をだんだんシステム化していって、そこには経営のノウハウがいっぱい詰め込まれています。だからM&A先の会社にこれを入れれば、必ず生き返ってきます。ただM&Aするだけではダメなんです。
 だからそこに、今日のテーマである「なぜエネルギーの事業をはじめましたか?」と聞かれても、なかなか繋がらないんですが(笑)。
ーそこは是非お聞きしたいです(笑)。
 でもそもそも、当社も印刷をすると紙を使うので、いつも「環境にダメージを与えている」と思ってはいるわけです。パルプは確かに再生紙や古紙を使ってますが、製紙には大量の水や電気が必要なのも事実です。節約や節電など、できる限りのことはやってきたつもりですが、それでも僕らは「環境に対していつも配慮が必要」ということは、すごく思っているんです。
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グループ会社・オリエンタルの1メガ太陽光パネル

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  そうして始めたソーラー発電も、つくったものをただ中部電力さんに買ってもらうよりも、顔が見える発電所として消費者と繋がったり、自分自身も「誰がどこでつくっている電気かをわかって使うようになりたいな」と思いました。
 そういうことがすでに可能ということは、説明してもらわないとわかりません。
 僕はたまたまのご縁で、以前からみんな電力さんとの繋がりがあったので、わかるようになりました。
 アサプリの事務所の上にも太陽光パネルが乗っています。だから自分達も電気をつくり、長野県のダムでつくられた素晴らしい再生可能エネルギーを使いながら、「この会社を経営していこう」と。
 それは当社のやりたいことに合ってるし、お客さんに対しても、価格競争ではない部分の当社のブランディングになる。「環境に配慮している会社」ということで、さらにそれでコストも下がるのなら大歓迎です。僕ら商業印刷はすごく厳しい価格の中で競争してるので、可能性がある部分には何でも挑戦していくべきだと思っています。
 しかし「再生紙やFSCの紙を使ってるから高くなりました」じゃ、ダメということです。それらを使っているけど、値段は今までと一緒で、自分たちは「そういうことを配慮してますよ」ということじゃないと、お客さんにはなかなかその辺のご理解はしていただけない。
 それはエネルギーについてだって、同じでしょう?
 だからこその僕の会社の取り組み、努力が必要なんです。
 お客さんに不当に高く売ろうなんて、さらさら思ってない。当然、市場価格の中で適正価格でなければ買って頂けません。その設定はお客さんが喜ぶ、当社の原価は割らないギリギリの価格に持っていかなくてはなりません。すごく難しいけど、その「原価を下げる」という概念を社員全員が持っていないと、勝ち残れないんです。
 社会的高慢経営をして、どこかがザクザクで、こっちで儲かってる分をこっちの赤字で補填してとか、そういうおかしいことはやめるべきです。僕は一品一品、お客さん別にソートして見ています。そうすればお客さんだって納得してくれます。原価を下げる努力をした先の結果として、「この金額ですよ」と。当社も適正利益を上げられなければ、雇用は守れないし、昇給もボーナスも出せないし、教育も新卒採用もできません。
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 僕は、利益というのは「お客様から預かっている」と考えています。利益とは「お客様の満足度」で、それでさらにお客様にいいモノを提供していくための「お預かり品」です。
 経営はいいモノで、なおかつコストも下がって、お客様に「なるほどね」と思ってもらえないとダメ。だから、創意工夫は一回転でなく、一回転半ひねりくらいが必要です(笑)。そこは、再生可能エネルギーの世界にしたって、あんまりきれいな話だけでもダメでしょう?
 コスいことはダメです。
 原理原則に従いながら、世の中のお役に立っていれば、必ず残っていけます。そしてその時に社員が肥満ではなく、栄養失調でもなく、筋肉質でないと勝ち残れない。
 それに「見える化」することはつまり、自ら考えて、自ら行動することに直結します。自分の創意工夫や努力の結果がすぐに数字に繋がるのが見えるのと見えないのとでは、全然違う。だからこその「見える化」ですし、社員に対しての「本当の優しさ」というのは「厳しく育てる」ということなんです。
 その上で、みんなが意識改革をしてくれて経営者意識でモノを見れるようになり、その意識を全員が持っていれば、見えないものも見えるようになります。そしてその時に「多角化経営」ということが、勝ち残るために必要になります。ポートフォリオでリスク分散していれば、総潰れにならないし共倒れもしません。
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毎年開催しているアサプリグループ大運動会の様子

 当社は、大運動会をやっています。
 グループ全社員270名が、大阪や東京からもバスで来て、朝の10時から午後3時くらいまで運動会を行い、そこには家族も参加して、子どもたちもパン食い競争なんかをやります。表彰式の後で大バーベキュー大会もやります。僕は全員のところまわって、酒つぎながら「お前んトコの父ちゃん、会社でめっちゃガンバッていてカッコええんやぞ」って言っています。このようなコンパの場所でも社員と理念の共有をしています。
 家族は、お父さんがどんな仕事してるかなんて、わかりません。運動会は土曜の出勤日に行い、パートさんも参加してもらいます。日程も1年前から決めているので「その日は絶対結婚式入れないように」と言って、病気の人以外は全員参加してもらっています(笑)。
 それくらい徹底しないとダメなんです。「今どき、なんで運動会なんかするんですか」ってよく聞かれますが、グループで一枚岩、一丸とならないとダメ。それがすごい大切です。グループ各社の場所が離れているので、会社同士のコミュニケーションをアップするために、わざわざ時間とお金かけてもやる価値は十分あります。
ー新しい挑戦と並列で、昔ながらのこともやる。
松岡 ベタですよ(笑)。
 先程お話した達成報奨金の大入り袋は、一万円札をピン札で給料日の5日前に渡すんです。今は給料も振込みなので、この現金一万円を社員は本当に喜びます。各社の代表が笑顔で拍手して、手渡しで全社員に渡します。一万円あれば呑みにも行けるし、魚釣りにも一回行けます。
 なんでそんなことを始めたかと言うと、リーマンショックの時に昇給を止めたので、代わりにみんなに「報奨金を出そう」となりました。その後、リーマンショックから回復した後に「辞めようか?」って相談したら「社長、続けましょう」って(笑)。それが実際に毎月、給料日前のラストスパートになるし、目標利益必達の力になるんです。

 

来週3/5(月)公開の新記事、お楽しみに

 

(取材:平井有太)
2017.10.19 thu.


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