2018.02.13 Tue.

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グループ会社・オリエンタルの1メガ太陽光パネル

  株式会社アサプリは、三重県の桑名市に本社を構える印刷会社である。そして、アサプリを中心とした印刷会社4社、広告宣伝会社1社、映像・Web制作会社1社とグループの管理会社1社の計7社を束ねるのが、株式会社アサプリホールディングスだ。
 ENECTではアサプリホールディングスの代表取締役・松岡祐司氏にインタビューを敢行、それを3回にわたってお届けする。
 アサプリは確かに、ソーラーパネルを約3000坪設置し、約1メガを創電し、年間売電で約5000万円の収入を実現させている発電事業者としての顔も持つ。しかしその真の姿は、リスクが大きいと言われる会社とも果敢にM&Aを繰り返し、成功させ、「出版不況」が周知の状況下、着実に経営実績を伸ばす辣腕経営者だ。
 M&Aを通じて「再生」が「可能」であることを体現し続ける、松岡氏。いただいた言葉は業種の垣根を越え、少子化、不況が語られて長い日本において、あらゆる経営者、そして従業員をも鼓舞するメッセージに聞こえた。
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オリジナルでつくれるフルオーダー壁紙「カベラボ」で、アサプリの歴史が蔦で表現されていた

ーアサプリの創業は1978年ですね?
松岡 それが一番最初の、アサヒ商事株式会社です。
 遡れば1958年に父親が印刷事業をやりだして、僕は2年間他社に見習いに行って、帰ってきてから参加しました。もともとこの桑名は、川口と並ぶ鋳物の生産地。最初アサヒ商事は副資材の販売をやってたんですが、次第に鋳物がダメになっていったので印刷業を始めました。
ーM&Aは今までどれくらいされてきたんですか?
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松岡 今までに6回です。最初は2002年にプリンター、05年にオリエンタルとサンブレインとM&Aを行い再生し、その後もバロックというデザイン会社をM&Aして、グループ経営をしています。
ー松岡さんは、05年の時点で「印刷業は衰退産業だ」と仰っているのに、同業種とのM&Aを続けてらっしゃいます。
松岡 「印刷業は衰退」は現在もっと加速していて、2005年はまだスマホが出ていませんでした。そこからスマホが出て、一気に情報収集の手段が変わりました。紙の印刷は何もしないと減っていくので、業態を変えながら、情報産業の連邦・多角化経営を目指しています。
 現状は印刷業務がメインですが、今後は動画やデザイン、ブランディングという風に領域を広げていっています。とはいえ飛び石はいけないので、注意しています。
 印刷業は、ピーク売上高が1992年に出荷額で9兆円くらいはありました。それが今は4.7兆くらいなので、約半分。そのグラフは百貨店の推移とほぼ同じで、百貨店も楽天とかアマゾンに変わっていき、印刷業もスマホやネット通販の印刷になっていくわけです。ですから業態変革をしていくのですが、M&Aは大変なことも多いんです。
 例えばM&Aさせてもらった一つの会社は、昔ウチが困ってる頃に逆にお世話になったご恩もあったところで。三重県中小企業再生協議会というところに頼まれ、再生しました。過去債務はある程度カットしていただき、新しい会社として刷新するんです。前の社長は会長として残ってもらって、一般債権者は守りつつ、全社員をそのまま雇用しています。これは7年くらい前、国による地方再生の指針に合わせてできた法令です。
 それでさらに、その社長の息子が新卒で入ってみえたので、彼をアサプリに転籍させ教育しています。僕は内心、将来彼に社長になって欲しいが、これはまだわかりません。でも聞くと、やっぱりおじいちゃんの会社が倒れかけたのは「悔しい」と。だから「悔しいなら、頑張れ」とは伝えてます。
 そういうことで、当社は「再生持続型」なので、御社の電気と一緒です(笑)。
ー野球で言うところの野村再生工場と言いますか、輝き出す前のダイヤの原石を大事にされている。
松岡 僕は、いいお客さんを持ってる会社は、「過去債務をカットして、ちゃんとした経営をすれば生き返る」と考えています。
 僕がM&Aを繰り返すのは、決して乗っ取りとかではなく、そもそも日本に欧米型のM&Aは難しいと。日本式M&Aは欧米式では通用しないと思っていて、もともといた30人の社員を全員雇用して誰も辞めなくて、みんな喜んでるわけです。ところが当社の役員会では、「今から30人も引き受けて大丈夫ですか?」みたいな話が出る。
 そこで、「君たちはわからないか」と。
 これからは少子化で採用が厳しくなるのに、その時に30人も経験者がいる。その人たちにやる気を出してもらえればいいだろうと。会社が行き詰ってボーナスがずっと出ていなかったところを、会社をちゃんと再生させ、ボーナスも出せればやる気もでるでしょうと。これは、時速4キロで歩いてる人に「6キロで歩いてください」と言うイメージ。別に「走ってもらわなくて良いので、もうすこし早めに歩いてください」ということです。
 そして僕が常に言っているのは、「理念の共有をしないとダメですよ」と。僕は京セラ名誉会長の稲盛さん盛和塾で勉強させてもらってますが、その「京セラ・フィロソフィ」を学び、もう一方ではそれをみんなと「共有する」ということが大切です。
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会社の壁に掛けられた、稲盛和夫さんのお言葉を発見

 働く目的は「全社員が幸せになる」ということなので、そこが「松岡家の個人資産を増やす」ということでは誰も納得しません。僕らには共感していただく大義があるわけで、それは今までM&Aした会社にしても「誰もリストラしません」と。しかし、「自分たちの会社なんだから、自分たちで良くしてください」と。
ー至極真っ当なお話に聞こえます。
松岡 そこは、みんな電力さんも社員が幸せになるようにやるべきであって。さらに両輪として大事なのは、お客様も含めた、関わる皆さんが良くなるように。そこで、理念共有の上で、僕が大切にしている「見える化」というのは、「管理会計のシステム」です。
 それは、営業がある仕事を3万円と見積もったら、その仕事を1時間3000円のアワーコストの人が10時間で終わらせればイーブン、20時間かかったら3万円の損になるわけです。当社ではそれがデザインでも印刷でも、どの部門でもリアルタイムにわかるようになっています。これは印刷業界の安売りをやめてもらうための目的もあり、当社で開発した「コストメーター」という管理会計のシステムです。
ー仰るように、お世話になった印刷業界に恩返ししたいお気持ちがあるのと同時に、社会の大きな流れの中で、印刷市場は実際に半分になってしまった現実もあります。
松岡 これが2025年くらいには、またさらに半分になります。
ー業界としては未来がないように思えつつ、かといって完全になくなってしまうわけでもない。
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松岡 だからこそ、残存者利益を取っていくんです。それはスキー場開発とか、星野リゾートみたいなイメージです。経営が厳しいのは、実は皆さんちゃんと経営していないのが原因です。経営さえちゃんとできていれば、再生できます。そこを実現するためのコストメーターなんです。
 なぜ赤字になるのか、原因はお客さんからの原稿か、営業が入れたいい加減な原稿か、デザイナーの腕が悪いのか、そういうことを「見える化」させながらまわしていく。常にそれが一覧表で出てきて、営業、デザイナー、印刷の問題点を適宜PDCAをまわし、ブラシュアップさせていくわけです。
 京セラの稲盛さんの考え方は、「一時間あたりの付加価値を4000円以上にしましょう」ということです。ですからそれに向けて、問題点があれば「こう『見える化』して、こう改善していこう」と。
 このシステムを一度破綻した会社に入れる。するとだんだん「見える化」が進んで、地道な作業によってM&Aした組織は再生していけます。

 

M&Aと再生、そして成長を続ける印刷会社がなぜ再エネをはじめたか、その根幹に迫る
次回19日(月)の更新に続きます(全3回)

 

(取材:平井有太)
2017.10.19 thu.


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