2018.07.22 Sun.

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上下の写真3枚は、6/18に日本記者クラブで開催された記者会見の様子。日本の「RE100」には環境省も参加を表明し、富士通など、着々とメンバーが増えている

  つい先日、丸井グループが、RE100参加を前提に、みんな電力のブロックチェーン技術で発電元がクリアな再生可能エネルギー(以下、再エネ)に切り替えたことがニュースとなり、日本のRE100企業は現在10社になった。
 それは富士通などがさらに続いたからで、サム・キミンス氏(RE100総括責任者)の言葉はさながら預言者のように、一気にRE100が盛り上がり始めている日本に響きわたる。
 もちろん気候変動や環境への配慮が大前提にありながら、すでにそれはNGOやNPO、環境アクティビストたちが言いそうな正論を超え、ビジネスに必須な要素として理解されつつある。
 日本がそれをただのトレンドとしてではなく、社会に定着させていくために必要なことは何か。キミンス氏の言葉は揺るがぬ説得力と共に、熱を帯びてきた。
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ー現状のRE100の規模は、想定していたものですか?
サム いいえ。
 間違いなく、想定よりもずっと早く、大きくなっているムーヴメントとなりました。
ーそうなった原因はなんだと思いますか?
サム ビジネスです。
 企業は、再エネ無しにはビジネスが成り立たなくなると考えています。この変化は驚くほど早いものです。
 再エネの価格は、例えばアメリカでは過去7年間で75%安くなりました。これはすでに、石炭よりも安い価格です。ここであなたが企業経営者で、大きな工場を持ち、そこではテラワット規模で電力を使用するして、経費削減を考えているとしてください。
 これは例え話ですが、今も実際に、それと似たケースを持った新たなRE100メンバーの相談にも乗っています。その企業は、電力の切り替えによって、早速2百万ドルもの経費削減が実現しました。まだ切り替えを始めた本当に初期の段階で、その結果です。
 つまり企業は、気付き始めているのです。
ー私の疑問は、なぜそれが日本で起きていないのか?ということです。
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サム 日本には複雑な状況があります。それは、誰かが解決せねばなりません。
 日本ではなぜか、再生可能エネルギーを設置して送電線に繋げるまでにかかる費用が、イギリスの10倍ほどにもなります。しかし、私たちイギリス人は自国の労働者に、日本の1/10の賃金しか支払っていないわけではありません。ヨーロッパには最低賃金が存在し、その額は日本のそれとそこまで変わらないはずです。それなのになぜ、10倍も変わってしまうのでしょうか。
 そこで何が起きているかというと、現行の古い仕組みが擁護されているということだと思います。古くからある会社を守るため、要所要所で手数料をはじめ、新たな参入者に対しては金額が嵩むようになっているんです。
 私が日本に勧めるのは、テクノロジー業界への働きかけです。昔からある重工業にこだわらず、未来を切り拓く業界と共に進むことです。重工業は過去の仕組みの中で生きていて、古いシステムにしか対応できません。
ー私たちにできることは、世代交代の実現を待つことだけな気すらしてきます。
サム それでは最低でも10〜15年がかかる、ゆっくりした変革となってしまいます。しかし本来これは、5年で成せる変革です。インドでは実際に素早く、巨大なマーケットが一気にひっくり返るようなことが起きています。
ービジネスに加え、気候変動への危機感もRE100の躍進に寄与していませんか?
サム 意外なことですが、今回私は台湾と日本を8日間かけて旅をしてきて、今初めて気候変動についての質問を受けました。私は「ザ・クライメート・グループ」の一員として働いているのにです(笑)。
 そして、はい、もちろん私たちの活動の根幹には、地球上のエネルギー・システムを根源から変えないと気候変動が収まらないという危機感があります。このままでは文明社会の維持そのものが不可能になってしまうからです。
 ただこれは現実として、人々はビジネスの上で納得をすると、実際にそれを実行してくれるということがあります。代わりに、「これが正しいことだ」という正論を伝えようとすると、もちろんそれに従ってくれる方々もいますが、逆に「やらない」という判断を下されてしまうこともあります。
 例えばパリ協定についてアメリカで語ろうとすると、少なからず「それは陰謀論でしょう」と言ってくる人々がいます。しかしそこで「電力が1ドルでなく、10セントですよ」と伝えると「それは何ですか?」と興味を持ってもらえます。
 気候変動はもちろんとても大切です。しかし、社会に伝えるメッセージとしては、経済的側面から話すようにしています。それが国境も人種も超え、現実に誰もが理解できる言語であるからです。しかもRE100は科学的知見とデータに基づいた活動であり、パリ協定が掲げている2050年までの脱炭素の目標に、同じく向かっているのです。
ー来日してから、経産省とも協議を重ねているかと思います。彼らの反応はいかがですか?
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サム 彼らはとても真剣に、親身に話を聞いてくれています。とてもいいチームで対応くださっています。
 同時に、彼らが縛られている制約も多く、さらにはとても大きく、今も影響力の強い石炭火力業界のロビー活動もあります。昔ながらで、保守的で、業界を守るために考えつくされた強大なシステムを構築した彼らの影響下、それら制約をかいくぐり新たな未来へ社会を導くことは、一つの挑戦です。
 しかし国内外で状況は激変しています。挑戦は、混乱が常態化している現代においては必須です。そして国外で明らかに大きな動きがあるのであれば、しかるべき準備をして、日本が大きな荒波の後に取り残されるのか、その波の先端に立って未来を切り拓くのか、どちらかを選ぶ局面にきています。
ーあなたの仰ることを経産省が理解したとして、では、具体的な行動に繋がりそうでしたか?
サム 興味深いのは、日本は世界に、特にテクノロジーの進んだ国として知られていることです。
 そしてこれは国際的な真実ですが、人類は再生可能エネルギーに対して自由なアクセスを持っています。時としてエネルギーは、「裏側に政治的な力が動いている」とか言われがちですが、実のところ他のあらゆるテクノロジーと変わらないのです。しかもそれは今、とても安価に、すごい勢いで成長しています。
 経産省には確かに、ここまで築き上げてきた日本社会独特のシステムの中で再エネを機能させる、難しい任務があるでしょう。送配電をバランスよくできるようにしたり、古い仕組みを、最先端のエネルギーに対応するかたちにせねばなりません。
 たぶんその解決には、先端のテクノロジー企業や勢いあるベンチャー企業に胸襟を開き、多様なアドバイスを募る必要があるでしょう。新しいネットワークを駆使して、来るべき未来に備える必要があります。
ーあなたは日本で今夏に15社、来年には50社がRE100に参加すると仰っています。
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サム もし経産省が世界の状況を理解していることを示し、たとえ瞬時にラディカルな変革を実行することは難しいとしても、「その方向へ進むことが正解である」ということを経済界に伝えられれば、それは企業が進もうとする道筋について、安心と自信に直結します。
 もちろん早いにこしたことはありませんが、私たちは企業の参加を2024、5年までは待つことはできます。また、社会を100%再エネ化する最終的な期日を、2050年としています。
 ですから、日本における再エネについては、正直なところ、願わくば現状の「2030年までに20%」という目標よりも積極的なものが欲しいと思っています。でも、まずは「世界の状況を見ています」という姿勢を示し、徐々にでも規制などを改革し、市場を、より再エネの購入や投資に適したものとしていけば、おのずと好循環が生まれます。

 

明るく、説得力溢れるキミンス氏のお話を聞いていると、日本にも希望がある気がしてきます。
次回はもう最終回。どうぞ、お楽しみに

 

(取材:平井有太)
2018.6.18 mon.


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