2018.07.16 Mon.

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ザ・クライメート・グループは英国に本部を構えるNGOで、ニューヨークとニューデリーにも拠点を置き、独自の広報活動で気候変動対策を進めている

  去る6月18日、緑が茂ってきた日比谷公園脇の日本記者クラブにて、ある記者会見が行われた。
 世界の錚々たる企業に再エネ化宣言と実施を促している「RE100」についてはENECTでも、日本CDPのシニアマネージャーである高瀬香絵さん、ロンドンにあるCDP本部からCEO、ポール・シンプソン氏の言葉を伝えてきた。そして、そもそもRE100を発足させた組織はCDPとは別にもう一つ、ザ・クライメート・グループがあり、RE100総括責任者でもあるサム・キミンス氏が来日していたのだ。
 ENECTでは、分刻みで経産省との会談や記者会見をこなすキミンス氏に30分いただき、インタビューを敢行。世界から立ち遅れた日本の現状、課題を踏まえつつ、「まだ遅くはない」と鼓舞してくださったお話を、3回に分けてお届けする。
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記者会見場は満席。キミンス氏に向かって右隣は、CDPジャパンディレクターの森澤充代さん

ーENECTではこれまで日本のCDP、ロンドンCDPのCEOへのインタビューもさせていただいてきました。CDPとザ・クライメート・グループの役割はどう別れていますか?
サム 私たちはパートナーです。まずRE100はクライメート・グループによって設立されました。厳密にはIKEAと一緒に、一番最初のRE100のアイディアは彼らが持っていたものを、その運営には専門の組織が必要と考え、動き出したのです。
 とはいえ私たちには、テクニカルな側面にリソースを割く余裕がありませんでした。そこでCDPとパートナーシップを築くことで、私たちは戦略と仕組みに集中することができるようになりました。
 これはとても重要なことで、CDPがいてくれるおかげで、何が「再生可能エネルギー100%=RE100」を意味するかが、定義されるのです。
 何を持って「RE100」とするか、とやかく言う人々は常にいます。あらゆる問いに対して答えを持っておくことが重要ですし、そのためには膨大なデータの整理と、毎年の正確なレポートが必要になります。
ーザ・クライメート・グループが担当する戦略、仕組みとは?
サム 私たちは増え続ける加入企業をまとめ、共に働き、定期的なミーティングを組織し、キャンペーンのプロモーションなどを実施しています。社会に対する大きなメッセージのコミュニケーションは、私たちが担っています。
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当時、最新で城南信用金庫さんのRE100への参加が決まった直後(スタバのすぐ右上にロゴ)。その後丸井グループが宣言をし、日本からは全8社がRE100に参加中

ー名だたる企業と交渉し、RE100加入を促すのもクライメート・グループですか?
サム 私たちは企業と動き、現場から出てくるメッセージを各国の政府に伝えます。ですので、私たちはヨーロッパ各国の政府や省庁、各種機関などとも近い関係を保っています。
 他にもアメリカ、インド、台湾などにも活動を広げながら、各地でパートナーシップを結んでいます。
ーそういったパートナーシップは自然発生的に組めるものなのか、かなりの努力や苦労を経て締結できるものなのか。
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サム 私たちは「We Mean Business」というプラットフォームにおいても、活動しています。We Mean Businessは企業や投資家の脱炭素の動きを推進している国際機関、NGO、シンクタンクなどを主軸とし、連合体として運営されています。
 クライメート・グループとして企業の参加を求めるものには、RE100と共に主宰している「EV100」、「EP100」というキャンペーンもあります。
 それらはすべて、企業にとって市場を前進させるドライブとなるよう設計されています。再生可能エネルギーや電気自動車を推進することで、二酸化炭素の排出を最低限に抑える社会の実現に向けて運営されています。
 クライメート・グループとCDPは共に、We Mean Business連合のメンバーです。日本からはJapan-CLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)も、その一員です。
 私たちが連合として動く背景には、これまで企業は多様なNGOから常に「これをこうして」、「ここに参加して」と言われ続けてきたので、少し疲れてきていたということがあります。結局伝えたいメッセージが同じであるのなら「一緒にやりましょう」ということで、今に至っています。
ー現在136の企業が(6/18現在)RE100に参加されています。
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サム 明日には137になります(笑)。
ーもう少し詳しく、そういった企業はどのように参加に至るのでしょうか?
サム 最終的に判断をするのは、それぞれ企業です。
 いくつかの企業には、私たちの方から、もうすでに環境に関する活動を続けてこられてきて、明確な功績もお持ちで、素晴らしいメンバーになってくれそうだということで、話しにいきます。他に、純粋に業務上大量の電力を使っていて、RE100に参加すべきだと考えられる企業にも、話しにいきます。そういった場合は、私たちから参加を呼びかけるかたちになります。
 先方から私たちのところに来ることもあります。それは、株主に「参加すべきだ」と勧められて来るケースや、取引先の会社から「RE100に参加するように」と伝えられて来るケースです。
 例えばアップル社は、エネルギーの問題にとても力を入れていて、取引業社すべてに、再生可能エネルギーに切り替えるよう伝え、実践させました。そしてそういった時、RE100は世界で唯一それを世界に証明できるイニシアティブなのです。
 最近になって見られる動きは、多くのサプライヤーが、自分たちの取り組みの証明としてRE100を利用してくれるようになったことです。ただ自分たちで「切り替えました」と言うのではなく、RE100を「正しく、信頼できる電力を使っています」という説得力としてくれています。
ーこれまで、加入して欲しかったけれども、入ってくれなかった企業というのはありますか?
サム RE100はすべての企業のためではありません。RE100は、未来を見つめ、社会がどの方向に進んでいるかを見極め、そしてリードしようという意識を持った企業と親和性があります。とはいえ、本当の意味で環境に負荷をかけない、余計な炭素を排出しないエネルギーを見極めるのは難しいことです。
 グーグルという企業は、再生可能エネルギーに特化した部署を新たにつくりました。アップルはサプライヤーたちに、エネルギーにどのように取り組めばいいかということを訓練しています。つまりこれは本質的な変革ですが、必要な変革ですし、ビジネスに必須な変革です。
 企業によっては、話しても「まだ準備ができていません」と返答してきますし、そういう中にも1年後に戻ってきてくれる企業もあります。RE100の設立当初から話してきて、つい最近やっと加入してくださった企業もあります。
 参加には大きな決断が必要で、それは簡単なものではないのです。
ーより具体的に、参加するために必要なものとは何ですか?
サム 最低条件は、「2050年までに、自社の使用電力を100%再生可能エネルギーとすること」です。それが期間的に最も長い条件であり、参加している企業間にはそれを早める競争もあります。25社はすでに100%を達成していますし、思い思いに2020年、2025年と、企業ごとに挑戦的な条件を設けています。
 もしあなたがアメリカやインドにいると、これは比較的簡単に達成できます。しかし日本、韓国、台湾、ロシアなどの国にいると、まだまだ「再生可能エネルギーを入手することそのものが難しい」という側面があります。ですから、現実的なスケジュールはそれぞれによって変わってくるんです。
ーRE100の承認を得るには、金銭面ではどれくらいかかりますか?
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サム 悲しいことに、私たちの当初からの支援者たちは、今RE100に並んだ企業のロゴを見て「世界を牽引する企業たちから賛同を得るようになって、もう私たちからの資金援助はいらないね」と言われます。ですから、資金面での挑戦は常について回ります。
 私たちは利潤を追い求めるベンチャー企業ではありません。それよりも、キャンペーンと影響力を維持し続けることが重要な目的です。
 まず、RE100参加には年間2500ポンドが必要です。それ以外に、もっと積極的で多くのオプションが付いてくるゴールドメンバーというものもありますが、純粋な参加にはその金額になります。しかしそれも、市場の状況が変わるのに応じてフレキシブルに変化します。私たちの目的は参加企業を縛ることではないからです。
 ただこれは事実として、データの収集と整理には多大な作業が必要です。そこはCDPの管轄ですが、参加企業から寄せられるデータ数だけでもすごい量であり、組織と高いレベルでのデータ解析の継続維持に、どうしても必要な額というものはあります。

 

世界におけるエネルギーの動きと日本の未来について、その鍵と核心を握るキミンス氏のお話、次回も楽しみに

 

(取材:平井有太)
2018.6.18 mon.


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