2018.03.10 Sat.

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LUSH”らしさ”の詰まったグローバル・フラッグシップショップの一つ、オックスフォード・ストリート店。写真は2階の様子

  株式会社ラッシュジャパン・丸田さんの「LUSHは、信じているものが強いと思うんです」というコメントで終わったLUSH記事初回(全3回)。
 私が理事を務める認定NPO法人「ふくしま30年プロジェクト」も参画する、全国34の測定室から成る「みんなのデータサイト」の一員として参加した、ロンドンでの「LUSH SUMMIT 2018」で見たものは、それこそ信じているものがなければ成立しないであろうものだった。しかもそれが堅苦しくなく、説教臭くもなく、当たり前にスタイリッシュに存在していた。
 サブタイトルに書いた「世界の、社会問題解決への萌芽」は、決して言い過ぎではない。
 もしLUSH SUMMITのようなことを、世界の大企業がこぞってやっていたとしたら、今解決の糸口が見えないとされている紛争や難民、差別、気候変動といった各地の社会問題について、容易に人々の意識が喚起され、社会のあり方は今とは違うものになっていただろう。
 エネルギーや、福島の問題でも根幹にあると語られる「無関心」について、まずは丸田さんに前回最後のコメントについて伺うことから、始めた。
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テムズ川とタワーブリッジをバックに、株式会社ラッシュジャパンから左がバイヤー・細野隆さん、右がブランドコミュニケーション・丸田千果さん

ー「信じているものが強い」というのは?
丸田 LUSHはイギリスで創立してもうすぐ25年目、日本に来てからは、来年で20年になります。
ー来年、アニバーサリー・イヤーなんですね。
丸田 LUSHが創立当初から大切にしていること、それは「フレッシュなフルーツや野菜から効果的な商品をつくる」、「常にお客様の価値観を尊重する」、「動物実験をしない」、「ハッピーな人がハッピーなソープを作る」などといった、いくつかの「信念」があるんですが、すべてがいつもそこに紐付いています。
 チャリティーのプログラムにしても、立ち上げてから昨年10周年を迎えました。それは、少しずつビジネスが成長して、それに伴ってできることが増えていって、じゃあ「今の自分たちには何ができるか?」と、いつも「ワン・ステップ・フォワード(その一歩先)」を探しているので、その意味で、昔から変わらないんです。
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「LUSH SUMMIT 2018」会場の外観

ー内部から見ていて、「そんなこと言って、ここをもっとこうしなよ」といった突っ込みどころは見当たりませんか?
細野 それは内部も外部も、やっぱりありますね。いつもいろいろな方との会話やフィードバックを通して、時には突っ込まれながら、ご意見いただきながら、です。
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イベント会場にはテーマごとに各種ブースがつくられ、スマートフォンを題材にした近未来的なデザインのブースもあった

丸田 例えば電力のことも、「電力自由化が始まる」ということで、それをパワーシフト・キャンペーンさんからお話を聞きながら「LUSHも再生可能エネルギーを使う”パワーシフト”できるじゃないか」、「でもやってないじゃないか」と気付いて。
 それで全国のショップを見渡してみたら、ショッピングモールや駅ビルに入っているショップが多くて「今は自分たちだけでは意外とできないんだ」ということにも、気付いて。
 とはいえ、今10数店舗の路面店があるので、「そこだったらできるかもしれない」ということで、いろいろな契約がある中で、実際にはまだ92店舗のうち2つしか「パワーシフト」できていません。今度3月末に新しいお店が関西でオープンしますが、そこはこの先再生可能エネルギーを推進する電力会社さんとの契約ができると聞いています。これでやっと3店舗目です。
ー店舗はGREENaさん、それから神奈川県の本社と製造拠点は湘南電力さんに替わっていると聞きました。
丸田 「シェフ」が、まるで料理をするようにハンドメイドで商品を作っているので、製造拠点のことを「キッチン」と呼んでいます。キッチンは高圧電力なので電力自由化以前に切り替えができていましたが、2016年4月のタイミングでいろいろなオプションが増えたので、社内でどういうポイントで契約先を選択するかを議論して、電源構成やコストの他に、「地元であること」も考慮しました。
ー地産地消は、大事な視点と思います。エネルギーに関しては、今後もっと取り組んでいく予定はありますか?
細野 発電してみるとか、そういうアイディアはずっとあると思います。なかなか上手くいってないですけど。
ー例えば、御社の約90店舗、本社、キッチンで働いている方々全員が(電力の契約先を)替えられていたら、それはすごいインパクトと説得力と思います。
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原材料の一つである「カカオ」についてのブース

丸田 2016年4月にパワーシフト・キャンペーンさんと、原材料にこだわった化粧品を作るLUSHで「電気の原材料を選ぶ」というメッセージで、再生可能エネルギーを選んで応援するキャンペーンを実施しました。キャンペーン実施前には、専門家の方をお招きし、社内でトレーニングを行いました。
 でも、実際にその直後に電力を切り替えたスタッフは、私が知ってる限り、社内では数名でした。理由は、「私の家は条件的に変えられませんでした」という人もいれば、そもそも当時、地域にいわゆる再エネ系の会社がなかったという人もいました。
 私自身は「どれくらい簡単なのか」、もしくは「どれくらい難しいのか」と思って、家の契約を替えてみたら意外と簡単でした。ただ、この「LUSH SUMMIT」に参加して、日本のゲストスピーカーの方々のお話を聞いて、「帰国後電力会社を切り替える」と話しているショップマネージャーに、すでに数名会いました。
ー御社にとって、商品の原材料にここまでこだわってきた中で、じゃあ「エネルギーについても考えよう」ということは、すんなり理解を得られた?
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                     「コルク」についてのブース

丸田 そうですね。「電気の原材料を選ぶ」というメッセージでしたし、社内は皆スッと落ちたみたいです。LUSHは商品の原材料にこだわっていて、それなら「電気の原材料についても、ちゃんと考えたい」というメッセージにしました。
ー「原材料」は一つ、重要なキーワードという気がします。細野さんはバイヤーとして、肝心の原材料が見つからなくて困ることはないんでしょうか?
細野 ありますよね。僕は最初の半年だけ総務にいた以外、約13年間ずっと仕入れをやってきています。初めての就職もLUSHで、人の入れ替わりがそれなりにある中でレアは存在になってきました(笑)。
 原材料に限らず、気候変動とかいろいろな地球の環境課題があって、モノが普通に買えなくなっているということは、ここ10年くらいでもひしひしと感じます。一般的な商品の原材料というか、普通に流通しているモノにしたって、モノによっては採れなくなってきています。
 とても怖いことだと思います。だからこそ、モノのつくり方とか使い方を考えていかないといけないんじゃないかなと思います。
ー一番の懸念事項はなんだと思いますか?
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細野 小さいことから大きいことまでいろいろな問題がありますが、僕がLUSHのバイヤーとして思うのは、人の意識というか、つくっている人、生産者でも特に土に近い人の感覚はそういった問題に気付いているけれど、そこから離れていくほど、「無関心」という問題が大きくなっていくということがあるように感じます。
ー無関心は、日本人の病とも言えるかもしれません。
細野 無関心はもっと、もしかすると世界的な問題ではないでしょうか。
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福島や放射性物質による環境汚染といったテーマは、「ENVIRONMENT(環境)」ブースに組み込まれていた

丸田 私もLUSHに入るまで、例えば福島に行ったことがありませんでした。「リスク、ありそうだな」と思っていたからです。
 それが2014年6月に入社して、その後南相馬の「菜の花プロジェクト」や、いわきの「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」から商品が発売されるというので、その企画担当者として「これは行かねば」と、往復を始めました。
 そうしたら、すごくイメージも変わったし、自分が知らなかっただけだったと思いました。だから、「無関心」と「知らないだけ」はたぶん違うんです。
 私は横浜生まれで、生活の中で土に触れることもなければ、地域付き合いとか、距離の近い地域の人との触れ合い方とか、あまりなかったので、そういうことも楽しくて仕事以外でも何度も福島に足を運ぶようになりました。
 そういった会社の取り組みがあるから、同僚や社外の友人たちにも「一緒に福島行かない?」と誘って一緒に行き始めたら、彼ら、彼女らも「なんか、楽しい!」と思ってくれて、それこそ年間行事みたいな感じで福島に行くようになりました。
 国道6号線とかを車で通る時は「やっぱりまだ線量高いところもあるね」というような話もしますが、結局は美味しいお酒とご飯、そこに面白い人たちがいると、人は結構行き来をするものなんだということもわかってきて。
 もちろん復興・再生への長い道程もありつつ、いろいろな想いを持っている人がいることも理解して、「一括りに『福島』って言えないな」ということもわかりました。それに気づいたことは純粋に、原発事故前に福島第一原発の電気を使っていた一人の人間として「よかったな」って。
 そこはやはり、友達を連れて行ったりもしながら、自分ができる中でできることをやり続けていれば、少しずつ広がっていくのかなと。
ーそういった一連のことは、それこそLUSHのおかげでしょうか?
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「オーガニックコットン」についてのブース

丸田 特に福島に関しては、LUSHに入社したのとそうでなかったのとでは、全然違ったと思います。
細野 震災直後から意識して、原材料を東北地方から買い始めました。でも福島の原材料を仕入れるというのは、バイヤーの間でも、3、4年はどうやって買えばいいのかわかりませんでした。。とはいえ、そこから目を背けることもできない。でもだからといって、「どうしたらいいんだ」という状態がずっと続いていて。
 その時に、菜の花プロジェクトが「一つの発想として、いい方向に行くのではないか」ということで始まって、そのタイミングで商品企画とキャンペーン企画が立ち上がりました。
ー丸田さんにとってはLUSHが突破口となった。
丸田 最初、放射性物質は、油にはほとんど移行しないことすら知りませんでした。それに私は、チェルノブイリの事故と同い歳なんです。1986年の生まれで、30年が経っても「チェルノブイリ、チェルノブイリ」って会話をしているのを聞いて、「やっぱり全然終わっていない」と。
 じゃあ、これは本当にわからないことですけれど、福島も「私が60になった頃に、福島が今のチェルノブイリと同じような感じになるのかな」と考えたりすると、それって全然いいことではないじゃないですか。そういうことが不思議と自分の中で繋がっていってしまって、それで今でも遊びに行っています。
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福島県のいわき市で非常に高度な測定や、甲状腺の自主検査を行いクリニックまで開設した「たらちね」による映像

 

エクスクルーシヴなロンドン取材、次回で最終回。
日本にはなかなかないであろう会社「LUSH」がどう世界を変えるのか、さらに見えてきます

 

(取材:平井有太)
2018.2.16 fri.


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