2018.05.19 Sat.

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メイン写真は、SIDE COREによる復興を象徴する作品と、奥の額縁にある言葉は「現状をただ悲観するだけではない」。
上の写真は、手前がいわき市在住の藤城光さんによる作品「ボイジャー 2011」(2016)と、奥が写真家・岩根愛さんによる作品

  中央集権ではなく、地方分権。一極集中ではなく、地域地域が、瑞々しいそれぞれの魅力を維持、持続させながら、輝き合う社会。
 中央の権力、巨大なエネルギーに無条件に頼る時代は終わり、地域地域が自治独立し、その場所だからこその魅力で瑞々しく輝くのが新しくも普遍的な、これからの社会であると力説くださる、会津電力佐藤弥右衛門さん。
 会津は喜多方でつくられた電力はみんな電力が扱うことで、首都圏に住むファンだけでなく、もちろん福島県内、菅野組合長率いるJAふくしま未来や、トークにフロアから参加くださった仁井田本家さんに供給することもできる。
 エネルギーの可能性を駆使し、どのように農地再生にまで繋げていくことができるか。
 一つ一つ、実際の事例を積み上げていくことの大切さを確信しながら、弥右衛門さんは「想像力の重要性」を説きます。
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ーいい加減、一極集中ではない分散型の社会の方にいくのが世界的にもトレンドと感じています。そしてそれを加速させるには、弥右衛門さんがすでにやられているように、実例や既成事実をどんどん積み上げていく必要がある。
佐藤 「想像する力」というか、それがないといけない。
 昨日一昨日、喜多方市のエネルギービジョン政策委員会というのがあって、150億円もの化石燃料代が喜多方から中東、カナダとか、お金がみんな他所に逃げていっているわけです。
 喜多方でそれだけのお金が地元でまわったら、すごい経済効果が出るわけです。じゃあ「そのエネルギーを自分たちでつくりだそう」ということが重要あり、今までの重油、プロパンガス、ガソリン、灯油を自分たちの代替えの再生可能エネルギーにすると。
 それは一気にいけなくても、積極的にそういったプログラムをつくれば、10年でやろうと思えば確実に進みます。でもなぜか、それをわかっていてもできない。でも、住民がそれをやりきったら「確実に豊かになるんですよ」と。そこで「想像をする」ということと、それに向けた計画を立てるということが、なぜできないのか。ゆっくり、たおやかにということでは、改革や目標にならないんです。それでは大きな波がきた時に消えてしまう。
 やる時は断固とした計画をつくって、やり方、やりきった後のことを想像してやるということは、とても大事です。特に、この原発事故を受けた福島県にはそれができるんです。
 スマートシティとか未来の地域づくりは、その「想像」の中に確実にあるし、その時地方自治には「2割自治」、「3割自治」という言葉がありますが、要するに生活保護を受けている状態です。中央から交付金、補助金もらわないと橋も学校もつくれないということじゃなくて、そこから切り替えながら住むということに地方をセットしないとなりません。
ーできるところから既成事実の積み上げという部分で、JAふくしま未来として、今後再エネを進めていく上での課題はありますか?
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菅野 ハードルはないですよ。前の、第27回の大会の時に、JAグループは全国600いくつの組織の中で、「基本的に脱原発」というやつを打ち出しました。
 ということは、結果的にはそこから「どう、エネルギーの問題も含めて動き出すべきか」ということがあるんだけれども、具体的な動きというのは全中も含めて、示唆しているような段階にはまだきていません。
 あとは全農さんあたりがバイオとかお米とかを含めてやってみたけど、大規模過ぎてまだ採算が合わないとか、現実的な段階では単位農協や県の方でどういう風に考えるか、という状況です。恐らく今福島県の中では、「JAふくしま未来がそれなりの突破口を切らねえと動かねえんでねえかな」という気はします。
 実際僕は太陽光に関しては少し、それなりの不安を持っています。というのは、僕は「農村の景観というはやっぱり大切だな」と思っている。それは森があって、川があって、田畑があって、海があるという全体の循環を考えた時の景観も含めて、バランスのいい、太陽光の他に木質バイオマスとか穀物等々、野草まで含めた、いわゆるこの荒廃した農地をいかに再生させながら全体的な生産力を高めていくか。
 そして日本の農業の問題点というはやっぱり、水田に寄り過ぎちゃったから、ここをもう少しバランスの中で「いかに全体の自給率を上げていくか」という、そこをもっと明確に考え方を出していかないとなりません。
 今国は、それなりの面積がまとまれば、農地なんかの整備費用は持ってきてくれるって言っているわけです。だからこそ明確に「地域計画をつくるべきなんだろうな」と。それも「誰かがつくってくれる」じゃなくて、自分たちでやる。
 ある程度の条件が整えば、若い人たちでも夢を持ってできると。そういう意味では、あんまり「大型、大型、大型」じゃなくて、一通り「自分たちが暮らしとして営める規模ってどうなんだろう」という風な、そこが循環的に整理をしていく核と思います。そしてそこは人材育成も含め、「JAが進めていくべき課題なんだろうな」と。
 エネルギー政策は「ウチもつくらないと動き出さないな」と思っているので、そこは動かしていきたいと思っています。
ーここで、県内の酒蔵である仁井田本家さんが挙手してくださっています。
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仁井田 郡山で日本酒をつくっています、仁井田と申します。
 ウチはたまたま山の真ん中にある蔵で、これもたまたま祖父が林業をやっていた関係もあって、山をたくさん所有しています。そこで、「自給自足の蔵を目指したい」と思っています。やはり原発事故でいろいろな想いをしているので、「エネルギーを自給したい。山の木を使って自給できたらいいな」と思っていますが、いずれ自分たちでエネルギーをつくるためにヒントをいただければと思います。
 それから、それが実現するまでの間、例えば今もう会津電力さんからウチのような企業も電気を買うことができるのか、それはいずれできるようになるのかな?と。
大石 電気をつくる側としてはバイオマス発電かと思いますが、私たちも小さいものから大きなものまでやってきて、正直申しまして、技術的にうまくいくやつといかないものがあります。それは、間伐材とか原料がかかってくる発電方法なので、木材の単価に影響されるということがあります。どうしてもバイオマス発電は現状「チャレンジの領域」で、いろいろと検証して、見極めながらやるのがいいかもしれません。
 逆に農業の領域では、ソーラーシェアリングは今後、是非やるべきだと思っています。同じ面積の中から農作物とエネルギーをつくれるということは、とても大きいことです。
 ただ農業用水は課題が多くて、高齢化や耕作放棄地が増えていく中で、その維持管理費をどうするかなという問題が出てきます。だいたいケースは皆さんで共有されているので、その維持管理費の部分は小水力発電を農業用水にうまく組み込むことで、出していくと。少水力の発電に関しては比較的技術的にも安定性が高くなってきてまして、どんなところでも置けば、系統の問題さえクリアしていればやりやすいです。
 使う側としては、仁井田さんが「地元の電力を使います。会津電力さんを使います!」と宣言されるだけで、「そんな買い方があるんだ」と多くの方に知っていただける取り組みになるかとは思います。
 また、これはまた別の自治体の事例ですが、電力について、自治体は通常入札制度です。それは価格基準の最たるものなわけですが、先日大阪の吹田市が全国で初めてくらいに、「FIT(固定価格買取制度)比率が30%以上の電力会社からしか買いません」という方針を出したんです。つまり、「ローカル・ルール」は誰でもつくれるということです。ですからJAさんも、そういうことを未来に向けて「ウチはこうするんだ」と宣言するのは、一つのやり方かと思います。
 最後に、今回福島に来て見ていると、たくさんの太陽光パネルがあります。社会全体として、今後20年の契約を終えた固定価格買取制度が終わった電気はすごく安くなります。ほぼ0円になってしまうんですが、そうであれば、地域で使ってしまえばいい。そうすると、この地域の電気代はすごく下がります。
 現状はどうしてもFITの20年間の収支のことを考えがちですが、実は20年後が面白いんです。地域の電力が安くなれば企業誘致もしやすくなりますし、少し未来の話となりますが、AIやIT技術は電気がなければ動きません。だからそういった技術を持つ企業には、電気代が一番安い地域が最も有利なはずなんです。「FIT後をどうするか」ということを考えながら未来を考えると、いろいろな可能性が見えてくるかなと思います。
ーFIT後については、弥右衛門さんも考えられていますか?
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佐藤 すべては自由化されています。誰でも発電できて、例えば仁井田さんの屋根に太陽光パネルを乗せれば、それを小売りすることも自由です。それを少し大きくしたのが会津電力みたいなものです。
 だから発電と小売りは完全自由化。そこで電気を送る送電線会社も自由化になるはずなんだけど、議論があるところです。既存の電力会社にとっては、ここを自由化しちゃうと完全に競争になってしまいます。彼らは送電線だけは自分たちのところで守らないといけない。そして現に今彼らは、本当は送電線にゆとりもあるはずなのに「高圧は入りません」と拒否しています。
 でもたぶん、もう一歩先で見えてくるのは「オフグリッド」です。
 一般家庭で太陽光を屋根に乗せ、そんなに大きくなくても蓄電池を置いて、そこに電気自動車があって、まず昼間発電した電気は貯めておいて夜や朝に使う。そして余った電気は自動車に入れて、会社で「ウチの電気売るから」となるわけです。
 すると、送電線がいらなくなるわけです。いざという時に必要かもしれないけど、でもそんな時代になったらバッテリーで事足りるような気がします。
 そういう意味でこれからは面白い未来がくるし、だいたい昔ながらの「向こう三軒両隣」で、ご近所へのお裾分けってあったじゃないですか、「ウチじゃ食べきれないから」って。そういうことが電気でできるし、向こう三軒両隣の6軒で集まって電力会社始めたっていいわけです。
 今は「ベースロード電源は原子力」なんて国は言っていますが、そんなのは経産省と電力会社がでっち上げてて、世界でも日本だけ。太陽光があって近所に水力やバイオマスがあったり、風力も加えて、もう向こう三軒がベースロードになるんです。
 電気のあり方が変わってきて、これでバッテリーの優秀なのが出てくれば「おめえのウチはまだ電気なんか買ってんのか?」なんて話になると思います(笑)。
仁井田 ということで、会津電力の電気をみんな電力経由で買える可能性というのは?
大石 それは、私たちが会津電力を仕入れさせていただければ、できます。
佐藤 そうですね、生活クラブさんだけでなく、みんな電力さんにもウチの電気を買ってもらって、そうすればそこから供給することができます。今は太陽光だけで6メガ、飯館も入れると8メガくらいつくっています。
 でも、だから以前から「酒造組合で電気つくっちゃった方が早いんじゃないか」って話もしてきたんですが(笑)。
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最近福島市から二本松市に移ったインドアパークCHANNEL SQUAREにて、福島の子どもたちが山本KIDさん、そしてSKOLOCTさんと描いた壁画

ーゲストのお三方で、お互いに質問はありませんか?
佐藤 大石さんは、送電線について、発送電分離の世界をどんな風に見てらっしゃいますか?
大石 やはり、不透明なところが多過ぎると思います。
 私たちは電気を、東京でkWh30円で供給させていただいています。その原価はだいたい3〜5割です。それに対して、送電線の利用料って11、2円になってきます。
 僕がすごく疑問に思うのは、先ほど弥右衛門さんのお話にありましたように、家庭用の太陽光の電気なんてほとんど遠くまで運ばれていません。すぐ近くから供給されているはずなのに、なぜか全国一律の送電線使用量を支払う必要があるのか?すぐ近くに供給しているのなら「1、2円でいいんじゃないか」と思うわけです。
 ですが、今のところ送電線は共通利用料なので、結局前提として遠くに電気を運ぶ設計をされています。今後は「なぜこんなに価格が高いのか」、「なぜこんなに空き容量が足りないのか」ということをきちっと透明化していくことが必要だろうと思います。
 その中でチャンスだと思っているのは「電柱の地中化」です。
 電柱を「自治体主導」に取り戻すと。「地中に埋めた送電線は自治体のもの」と言って、その運用を電力会社に委託するから「オペレーションはコンペに」ということにする。特にオリンピックに向けて「電線が見苦しいから、どんどん地中化しよう」という動きは実際にあります。そこを契機と捉えてやるのもいいかなと思います。
 もう一つは、高速道路と鉄道会社はすごい送電線網を持っています。実際に東京都内の鉄道の一部は、新潟県の発電所から自社の送電線で送られてきて動いています。また、高速道路の下にも送電線網が走っています。
 ですから、「キャパがいっぱいで送電線が使えません」というところは、優先的に鉄道会社さんや高速道路さんに解放いただくと、そこに競争が生まれます。そうなった時に、いろいろな透明化が進むんじゃないかなと思っています。
 弥右衛門さんが仰ったように、一つ事例をつくると全国的にそれに倣ったりすると思いますので、すごく大事だと思います。

 

本来なら最長でも全3回で終わっているENECT記事。当日の熱量はそれに収まることなく、最終回の第4回へと続きます。
再三話に出てくる、社会を動かす上で重要な「事実の積み上げ」の具体的な一例が、このトークから生まれそうです

 

(取材:平井有太)
2018.3.24 sat.


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