2018.05.13 Sun.

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メイン写真のチャンネル・スクエアONE STEPフェスティバル獏原人村の満月祭プロジェクトFUKUSHIMA!は、福島で、市民の間から生まれたムーヴメント。
すぐ上の作品はミズアオイ。福島からはなくなったとされていた沼地に群生する花が、津波を契機に復活した。立ち上がる民衆の象徴として、保存運動もはじまった

  去る3月、まだ雪が残る福島県は猪苗代町にあるはじまりの美術館で開催された、エネルギーに関するトークイベント。
 登壇者は、会津電力を牽引される大和川酒造店9代目当主・佐藤弥右衛門さん、17あった県内の農協が4つに合併され、県を代表する果樹を主力とする県北エリアを統括するJAふくしま未来・菅野孝志組合長、「顔の見える電力」を掲げ、このENECTも運営するみんな電力代表・大石英司さん。
 山を守り、川を守り、田畑を守ることを大前提に、そこから繋がっていく海まで考えた時の「循環」を考える農協代表としての菅野組合長に、消費者の協同組合である福島の生協の会長、新しく福島大学にできる農学部の中心メンバーである研究者もフロアから加わり、地域を考えた時のエネルギーの在り方について、熟議が進む。
 記事の第2回(全4回)は、生活クラブ生協を通じて私たちに電力を供給している、弥右衛門さんの言葉からはじまります。
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ー弥右衛門さんの電気の供給先である生活クラブさんからは、反響はありますか。
佐藤 会津電力を立ち上げてから、会津には今70ヶ所近くソーラーパネルを設置しています。規模は500〜1000kWhといろいろで、でも今電力会社は「高圧電力を受け入れたくない」とか、いやいやしているわけですよね。
 その中で「会津の電力を使いたい」と仰ってくださった、それが生活クラブ生協さんです。生協さんも内情はいろいろな意味で高齢化と少子化が進んでいて、かつてはどんどんものが売れたのが、商品や量に変化が起きているわけです。
 また、一度は全村避難になった飯舘村とも関わりがあって、「放射能で農地はダメになったかもしれないけど、発電はできるね」ということで、太陽光発電をしています。だんだん電力の買い取り価格も下がってくるので「じゃあ、ソーラーシェアリングで」ということで、そこは応援の意味も含め、パルシステムが買ってくれています。
 そこには少なくとも、「誰がどこでこんな風につくっている電気です」という意味があります。ただ消費ということではなくて、「生活者が選んでいくんだ」というアイデンティティがこれから有効になっていきます。
 会津の面積は千葉県くらいあるらしいですが、その75%は森林で、山だらけというか、昔はそれが財産でした。山の木々を循環させて、端材は薪になったり炭にしたりしてたんですが、「他所から買った方が安い」となってそれが止まってしまった。僕らにしてみたらそこが課題なわけです。
 ペレットストーブを使う時、木は切って燃やすんだけれども、切った分だけ新たに生えてそれがCO2を吸っていくということで、カーボンフリーとなります。「山の木をまわす」ということは再生可能エネルギーとして、地域の活性化としても大事です。
 皆さんはどうしても「本当かい?」、「そんなことできんのかい?」という調子です。会津電力には自治体が出資してくれていますから、まず自治体の組長さんをお呼びして、役場になら「ペレットかチップのボイラーを入れましょう」と。電気もいろいろな、自治体の建物の上に太陽光を付けさせてもらっていますので、そこで発電した電気があるわけです。三島なら三島、只見なら只見という風に、例えまだ小さくても、自分たちでつくったものを自分たちで使っていくように動いていく。
   それをやっていくことで、だんだんだんだん、地域に浸透していくということです。
ー具体的な事例を積み上げていく段階に入っているということかと思います。そして改めて「やりもしねえのは、考えなかったのと一緒だ」というところに戻ってしまいますが、JAには再エネ用に5000万から1億円もの積立金がおありということで、今までその使用方法について、少しは話してこられたのではないかと思います。
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菅野 県内のJAの中で、意外とエネルギーのことを考えているところは、そうはないような気がします。でも「なぜ積立金があるのか」と言うと、原発の問題を含めて少なからずいろいろ考えた時に、荒れているのは農地だし、山だし、里山です。その状況を見ながら、「我々は本当に手をこまねいて見ているだけでいいのか?」という反省が結構あるわけです。
 それで場面場面で話まではするんだけれども、きちんとセクションとして再生可能エネルギーを考え、具体化するための部署がないと、やっぱり動きません。
 僕らは常に、事業計画の中に必ず「再生可能エネルギーをどうのこうの」、「調査研究する」と入れるんですが、お題目だけじゃなく、それをいかに具体化するかというのは「一つの部署が必要だな」と。
 「農地を守る」とか「食料自給率を上げる」というのは、結果として山を守る、川を守る、田畑を守る。そしてそこからずっと繋がっていく、海まで考えた時の循環。その基本として山、里を守っていく中で、自分の地域でできるところから専門の部署をつくって組み立てていくと。
 今年度は実際だいたい動き出してしまったので、実質は「今年の後半以降から明確に動き出そう」と、今話を聞きながら思いました。
 弥右衛門さんの言ったペレットの話とか、そこはやはり経済性をキチンと組み込まないとダメなので、学ばせていただきたいと思っています。
ーJAふくしま未来のお膝元で、飯館電力が協力して、夏頃から動き出すソーラーシェアリングがあったかと思います。
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弥右衛門さんがソーラーシェアリングでサポートした銀座ミツバチには、菅野組合長も関わられていた(写真最手前真ん中)

佐藤 銀座ミツバチという、銀座を拠点にされている田中さんという方がいます。その田中さんがソーラーパネルを設置する物件を紹介してくれたり、「福島で太陽光をやりたい」ということで、一応コンサルティングはしました。
 東京の人たちはみんな、「オレたち福島の電気使ってたんだよな」と言うわけです。それは原発だけじゃなくて、会津の水力や猪苗代湖の水、只見川とか、そういう意識はあって、そこで田中さんたちが「具体的に設備をつくろう」、「地域の活性化に繋がっていこう」と。
 これは菅野さんも仰いましたが、「シュタットベルケ」じゃないけど、これからの地域づくりは単にエネルギー云々だけじゃなくて、ヨーロッパの方ではそれをどう地域づくりの中に取り組んでいくかということが考えられています。
 そこが日本は「道路をつくれ」、「下水をつくれ」と要するに中央の指示で、何というか、地域が一つの「アイデンティティを持って動く運動体」になってないんですね。ただお上から「予算が付くから」ということで、本当はその地域に「水がある」とか「森林資源がある」とか、昔の方がたぶんできていた。
 シュタットベルケというのは、例えば都市部になればなるほど大量の生ゴミが出てくるのを、片方でできたものをいかにマイナスのエネルギーにしないで循環させていくか。本当は日本だって、江戸時代の江戸は100万人都市で、あそこでは化石燃料を一切使わずに生きてたわけです。
 できるんです。
 日本が一番魅力的で有機的な地域づくりをしていた。それがいつの間にか大量生産、大量消費になり下がっちゃって、さらにもっとそれを進めようとおかしくなってしまった。そこに「地域づくり」ということで、シュタッテベルケじゃ横文字だけど(笑)、要は「循環型」。
 そこに、大石さんも言ったけど「RE100」みたいな、大手企業ほど、温暖化の片棒を担ぐエネルギーを使って企業活動をしてるようなところには「もう、お金は貸しませんよ」ということも始まっています。だからこそアップルもパタゴニアも、「これ以上私たちはつくらない」、「これ以上は環境破壊になる」みたいな、普通だと「もっと儲けたいからもっとつくる」みたいなところを寸止めする格好良さがあるんですよね。
ー本日、農協と同じ協同組合で地元の福島県生協連の会長さんも来てくださっています。県内の生協の動きも、お聞かせ願えますか。
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福島県生協連も、311以降の福島において復興に尽力し、今も全国の生協と連携しながら頼もしく取り組みを続ける組織である

吉川 私の生協であるコープあいづは会津電力の地元に本部があるので、ほんのわずかですが出資もさせていただいたり、本当は会津電力で電気の小売りができればすぐ我々も購入できるんですが、小売りには専門の会社をつくらないとならない。
 ですので、先ほどから話がある生活クラブ、パルシステムの連合会、あるいはグリーンコープとか、それぞれに事業連合を組んでいる大きな塊としては様々な事業をやっています。私の生協が所属しているコープ東北事業連合という、それは東北6県の生協で組織していますが、そこでも「コープ東北電気」というのをつくっていて、我々はそこから再エネを買うことができるようになっていますし、売ることもできます。風力とバイオマス、そして太陽光でコントロールして発電をしています。
 でも会津とすると、せっかく会津電力があるので、いまのところコープ東北からの再生エネルギーの組合員への供給はしておりません。なんとかして会津電力の再生エネルギーの供給ができればいいと思っています。生協陣営での再生エネルギーの取り扱い状況ですが、主旨は理解されていますが、やはり価格の問題もあり、実態とすれば大きく伸びているということではありません。
ーもともと生協総研にいて、震災後に福島大の教員としてここ猪苗代に家族で引っ越してこられた林薫平先生が挙手されています。お願いいたします。
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少子化、過疎化が進む地方で、国立大学における学部の純増は本当に稀なこと。福島大学で新たに始動する農学部の一員として活躍する林先生

林 確かに、こういった「コンセプトがある電力」というのは素晴らしいものです。ただ同時に今、一般世帯の皆さんの生活はなかなか苦しく、地産地消とか有機農産物、「顔の見える電力」もそうですが、日々の暮らしが大変で手一杯という状況があります。ですので、もう少し目に見えるかたちで、「地域のコミュニティづくりに繋がっていくようなこと」が最初のステップかなと思っています。
 例えば大和川酒造店さんは、農業用水の堰を守る取り組みで参加を募集し、その堰で酒米をつくると。そして、その酒米をお酒にするということをされていました。それは喜多方市民だけでなく、福島県民はみんなそのお酒が好きで、その心は、そのお酒を呑むことで「歴史ある農業用水を守れる」、「水田も守れた」ということかと思います。
 だからまず、市民は自分たちの地域の環境を、商品を愛用することや水さらいなどでサポートできて、いろいろな関わりの中で会津の森も、農業用水も維持できるということがあります。もしかしたら「その先に電力もあるのかな」と考えるわけです。
ーその辺りはみんな電力で言うと、長野県との事例などもあるかと思います。
大石 長野県が水力で発電している県営の電力をみんな電力が仕入れ、世田谷区さんが「是非、保育園で使いたい」ということで、今、長野県産の電気が世田谷区の保育園に供給されています。
 世田谷区の43の区立保育園のすべてにポスターが貼ってありまして、そこには「この保育園の電気には、長野県産の電気が含まれています」と記されています。保護者の方はそれを結構ご覧になっていて、長野県と世田谷区の間でバスツアーも企画され、それも先日実現しました。さらに長野県からは名産の積み木が送られてきて、「世田谷区の子どもたちは是非、これで遊んでください」ということで、そういった交流がすでに始まっています。
 そうやって見えないはずだった電気の関係が、人と人との交流に繋がったり、地域間の交流になっているんです。
 さらに世田谷区さんには街路樹がたくさんあって、切り落とした枝がたくさん出ると。そこで群馬県の、森林が7割を占める川場村に木質バイオマス発電所があって、そこにその枝葉を集めて持って行き、そこで発電した電気を世田谷区が買うことで、地域同士の交流と資源の循環ということも予定されています。
 そういった循環を「いかに見える化していくか」ということは、とても重要なことです。そしてそこで割と課題になってくるのが「その話はわかったけど、こちらの電力は2割安いぞ」と。やはり大半の方々は価格で電気を選ばれるわけです。
 ただ、林先生の仰るところの「コンセプトのある電力」を好む層は、もともと0%だったわけです。それが社会のいろいろな事象、例えば原発の事故や電力の自由化もあって、価格ではない付加価値で電力を選ぶ方々は確実に増えています。
ー弥右衛門さんのご活躍はテレビや新聞報道を通じて首都圏にも広く届いています。それこそ会津電力を東京でも使いたいという方は、実はかなりいるんじゃないかなと思います。
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大石 いると思います。そういった一般のお客さまもいますし、法人の使用する電力にも、ストーリーを持ち込めたらと思っています。それは「この企業は、福島の誰々がつくった復興に繋がる再エネを使っている」というようなことです。
 今、アップルさんにような先進的な企業さんには独自のルール、それはバイオマス発電所でも「熱帯雨林地域の森林を破壊するような、輸入バイオマスは認めません」みたいな「ローカル・ルール」をお持ちです。そしてもちろん、価格的に「今より高いのは困る」ということは皆さん仰います。つまり本音は、「電気代は同じくらいでもいいけれど、できればちょっとでも下げて欲しい」と。
 そこはまだまだ、提案の余地があると思っています。増えていっている市場ですし、面白いイノベーションの可能性を活用することで、できるだけ抑えた価格に加えて「電気って単純に面白いね」という付加価値を付けていく。
 将来的には、スマホを各地でかざすことで、「ここの電気は会津電力から何%、只見川から何%」という風に「見える化」させることもできるようになります。すると、距離的に近いから「じゃあ、行ってみよう」ということや、発電所の応援者が可視化されていて、そのリストに例えばアップルが入ってたりすると、それはスマホ世代には強くアピールします。そういう意味で、スマホやIT技術を駆使することで、どんどん新しい要素が生まれていくように思います。
佐藤 今「ローカル・ルール」ということが出てきました。僕はそこだと思っています。
 僕が「里酒」と言うのは、地の水を汲み上げて、まわりで採れた米と培ってきた技術で、さらに米を蒸す時に「電気はどこのを使ってるの?」となるわけです。それがやっぱり一つの、大きな価値になっていくと思うんです。
 東京に生きてる価値と、こっちに生きてる価値と、全然違って当たり前だと思うんですね。みんな、すべての価値が東京にあって、こっちに来るとだんだん価値が低くなっていくような感じで話すんだけど、そうじゃない。
 あっちに生きる価値とこっちの価値はそれぞれに独立しているわけで、それもまた右と左で比べられるものでもない。そういうローカルのルール、ローカルの価値の方がはるかに高くなってきている。
 原発は大量生産、大量販売でメインフレーム集中型で、あんなに大きなものをつくって東京に送ることで3割くらい漏電はするし、一度事故を起こすととんでもないことになる。一歩間違えれば日本が終わってしまうというか、まるで戦争みたいな、もう「そんなものを振り回すような時代じゃないんだ」ということです。
 ですから、そのことの価値に早く気付いて、新しい自分たちのアイデンティティを持った地域づくり、国づくりをしていかないとダメだなと、つくづく思います。
 価値を、自分で認められない、認める力がないんだったら、それは情けない。自分たちが住んでいる豊かな地域、コミュニティ、歴史、文化の、それがすごいじゃないかという話なんだけど、なぜ都市部ばかり、東京やニューヨークに価値があるという話になるのか。こっちの方がよほど豊かだという話です。

 

常に流動的で、社会として初めてのことばかりな状況の中を進む、電力の世界で活躍を続けるキーマンたち。
話は未来へ、そして根っこのところで、私たち一人一人の在り方にまで及びます。次回も楽しみに

 

(取材:平井有太)
2018.3.24 sat.


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