2018.01.14 Sun.

  2月4日、京都にて開催される「ワールドシフト・フォーラム」準備中の谷崎テトラ氏。
 「分断」が大きな流れとなっている世界の潮流に対して、民衆からは地域ごとの団結、連携の力が湧き上がっている。主役は国家や大企業、大きな組織ではなく、市民一人一人。
 本当の幸せとは何なのか?それを明らかにしていくプロセスとして、ワールドシフトは機能しているのかもしれない。
 みんな電力のことも、「エネルギーの分野におけるワールドシフトの一つ」と指摘する氏に、その意味について、さらに迫った。
ー(みん電は)確かに「シフトの塊」ではあります(笑)。
谷崎 ワールドシフトとは「持続可能な世界への転換」のことです。それぞれの活動を通じて「世界のシフト」が起きています。例えばみんな電力は事業を通じてエネルギー分野でのワールドシフトを進めていますよね。2月4日のワールドシフト京都フォーラムはその情報交換の場なんです。
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 ワールドシフト・ネットワークは「問い掛ける」NGOです。普通のNGOは「森を守ろう」、「海を守ろう」といった具体的な活動をしているんだけど、僕たちは人々の考え方や行動に働きかける。
 ワールドシフトでは電通のクリエイティブディレクターの並河進さんが作ってくださったワールドシフトのロゴを使って問いかけるのですが、この、「空白の長方形」を埋めることでそれぞれのワールドシフトを表現します。
 それぞれの人が、それぞれの立場でワールドシフトを宣言することで、つながります。ですので、僕はあらゆる業界で、それぞれの人にこの図式を見せては「あなたはどういうシフトをしていきますか?」ということを聞いています。
 その時にこの「→」が、重要になります。「→」がソリューションなんです。ソリューション自体が持続可能で拡がっていくものであれば、ソーシャル・ビジネスにもなるし、転換のキーワードにもなる。それが、2010年頃に僕が始めたことです。
ー2009年にブタペストクラブの集まりがあり、2010年にNGO設立、2011年に東日本大震災、2012年にリオで地球サミットと、まるで仕組まれていたかのような流れです。
谷崎 2012年にリオデジャネイロで国連最大級の会議でもあるRIO+20(地球サミット)が開催されました。
 地球サミットは1992、2002年に続いて3回目だったですが、残念ながら内容は92年の合意よりもさらに後退したんです。出てきた文書は「この世界に危機があることを、私たちは認識した」くらいなもので、本来ロードマップをつくらないといけなかったのに、「国際社会においては合意が難しい」ということが明らかになってしまった。
 でも地球サミットには、新たな希望も生まれました。世界中から企業やNGOなど市民が10万人集まりました。リオの街で約3000の関連会議を自主的に開催し、様々な分野で、具体的な議論とアクションが語られました。だからもう「国連がどうこう」という話ではなく、僕たち市民の中から、「想いがあって動いている人たちが知恵を共有していくしかない」ということがはっきりしたんです。
 メインのサミットの方では、南米の小国が「このままこの会議が終わったら、まったく実りがない」と提言しました。だから「せめて改めて、サステナブルなゴールを決めるための会議をやりましょう」という提案だけをして終わりました。そしてそれが、何とか2015年のSDGsに繋がっていきます。 
ー世界のどうしようもない流れと、市民間から湧き上がってくる頼もしいムーヴメントの両方を見てこられた。
世界の3つの危機
谷崎 もう一つ、インターネットで世界中の市民が参加したというのが、2012年の希望でした。というのは、国連の歴史の中で初めて、ネットを通じて誰もが国際会議に参加できるチャンスがあったんです。ものすごく大勢の方々が集まり、それは「マルチ・ステイクホルダー・プロセス」という言い方があるんですが、そこでは行政だって、たくさんいるステイクホルダーの一つでしかない。
 つまり「市民の時代が一気に拡がった」というのが、僕の感想です。そういう意味では、一つの転換点だったとは思います。もちろんその反動もあってトランプ政権みたいなものも出てくるんですが、地球には本来、すべての環境問題も解決するくらいのリソースがある。
 そこで奪い合って「オレが、オレが」とやってる限りにおいては、逆に軍事費が嵩んでブレイク・ダウンするのが今のシナリオ。でも、もしかすると貧困や環境の問題は「平和でさえあれば」解決するかもしれない。
 世界中の軍事費の8%を環境問題に振り分けるだけで、その多くは解決すると言われています。その時に、個別の意志はもちろん重要なんですが、全体としての転換、22世紀の価値観を僕たちは知るべきであると。そしてそのためのツールというのが、デジタルテクノロジーやネットによって、すでに実現可能になっているんです。
 今やすべての人たちがネットにアクセスし、合意形成していくということは不可能じゃないんですね。もちろん70億人全員ではないですが、地域ずつの合意形成は直接民主主義として全然できる。
ーツールや手段は実はすでに出揃っている。食だって、今廃棄しているものを貧困層に分配すれば十分足りるし、選挙も今とは違う方法がすでに可能なのに、何かが邪魔をしている。
谷崎 そうです。
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取材に同席したエネルギー・民謡アイドルの永峯恵さん。ワールドシフトについて熱く語る谷崎氏の話に聞き入っています

ー現実には、気候変動は加速する一方で、格差も広がっていくばかりです。
谷崎 そこで「グッド・プラクティス」と僕たちが呼ぶものがあります。
 教育の分野、エネルギー、衣食住すべての分野のシフトがあります。それは仕事、コミュニケーション他あらゆるところにあるので語り尽くせないのですが、なんとなくみんなが直感している「自分の仕事を通じて社会を変えていく」ということですね。
 そこが今までの仕組みではうまくいかなかったので、仕組みそのものを変えるパラダイムが必要です。
 そこは、誰もが状況の説明まではできるんだけど、その原因にまでのアクセスがなかなかできない。そしてその転換点はもしかしたら、「そもそも人間てなんだろう」という問いへのアクセスなのかもしれない。
 「本当の幸せって何?」みたいな質問があっても、今はどうしても経済が一番優先されているけれども、僕らの幸福度は年々下がる一方であると。なぜか常に昔の方が幸福度が高くて、社会の物質的豊かさと反比例してどんどん孤独になり、断絶もして、だからこそ「お金」という価値観に固執する状況が生まれている。
 でも、「お金がすべてじゃない」ということも直感的にわかっているし、僕たちの行動原理は、必ずしもお金がすべてではない。我々自身の想いの深掘りも必要で、「本当に大切なものって何だろう?」という部分にアクセスしていくことは、とても重要です。

 

来週月曜、最終回に続く。
また、来たる2月4日、京都造形芸術大学春秋座にて「ワールドシフト京都フォーラム」が開催されます。詳しくは「ワールドシフト京都フォーラム」の文字をクリック!
そして、ENECTでは「ワールドシフト京都フォーラム」に皆さまをご招待します。
ご希望の方は1月31日までに、こちらからお申し込みをお願いいたします。

 

(取材:平井有太)
2017.11.22 wed.
テトラ・アー写

谷崎テトラ

京都造形芸術大学創造学習センター教授、放送作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。 1964年、静岡生まれ。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&キュレーターとして活動中。国連 地球サミット(RIO+20)など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。リバースプロジェクトCGL研究員。現在、伊勢谷友介とInter FM 「KAI Presents アースラジオ」(毎週第4土曜19時〜)に出演中


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