2017.06.07 Wed.

  5月25日(木)のDOMMUNE出演、27日(土)の渋谷VISIONでのリリースパーティを経て、6月7日(水)にDJ KRUSHソロ活動25周年の節目として、本日6月7日にアルバム『軌跡』は発売される。
 日本において、かつてないほどラップ・ミュージックが盛り上がっている昨今。その中でも選りすぐりの新旧トップ・プレイヤーたちが集結したVISIONの夜は、出演者それぞれの軌跡を言葉の粒のかたちで、全身に浴びる体験となった。
 「親子ほども違う」と笑うラッパーたちを、氏はどう選んだか。そして、彼らのラップに何を見出し、結果としてアルバムに詰められたものは何で、エネルギーとの接点はどこに見えてくるのか。
 全3回インタビューの第2弾を、お楽しみください。

 

djkrash

ソロ活動25周年、初のラップアルバム。

feat. アーティスト(読み五十音順)
R-指定
OMSB
志人
5lack
チプルソ
Meiso
RINO LATINA II
呂布カルマ

人は...地球は...宇宙は...どこから来てどこに行くのだろう。
過去...現在...未来...そこには一体何があるのだろう。
生の喜び...生の苦しみ...生の悲しみ...その先にあるものは?
アナログの時代...テクノロジーの進化...遺伝子の組み換え...
その先の未来は?

DJ KRUSHの重く厚いビートの上で国内屈指のラッパーが
言葉巧みにそれぞれの"軌跡"を繰り広げる最上のコラボレーション作品!

ーコンスタントに日本語ラップは聴いてこられたんでしょうか?
KRUSH RINO、Meisoくんや志人はずっと聴いてます。やっぱり、自分の持ってる感覚にはまる人たちを聴いてしまいますね。25年ということと、自分の年齢もあるし、今さらやれ金だとか高級車、ドラッグだとかいうことでもないし、そういう目線で選ぶと、BOSSくんやRINOくんの世界観になっちゃうというか。
 僕の長女は30です。その年代の子も多いし、5lackくんとかは28くらいでしょうか。だから、親子でヒップホップみたいな(笑)、「すごい時代になったな」って。それで子どもに「親父、そこスネアいらないだろ」みたいなダメ出しされたり(笑)。
ーそんなやりとりもあった?
KRUSH それは冗談(笑)。でも、そういう濃いやりとりをしながら、つくってきました。向こうも「いいものがつくりたい」という気持ちがあるからはっきり言ってくるし、それは音楽をつくる上で大切なことだから、気を遣わずやって欲しかったということはあります。
ー若い世代、新しい世代にどんな可能性を感じていますか?
KRUSH 今回参加してくれた皆さんは、各自本当に個性が強いじゃないですか。切り口も違って、それは過去にやってきたTwiGyとかBOSSくんも、ちゃんと自分の世界を持っている。僕は誰のコピーでもない、他人に真似ができないアーティスト、ミュージシャンが好きで、自分が持っていない才能とかやり方を見ると、すごく興味が湧くんです。
 どうしても一緒にやりたくなって、「触ってみたい」という欲望があって、その欲望が出たのが今回参加してもらったラッパーだし、今までやってきたアーティストだし、その個性に僕らは刺激されるんですね。
ーどう人選を絞っていったんでしょう?
KRUSH 今回やってもらった人たちは、ほぼ元々知っていた。それでもう一回、改めて彼らのアルバムを聴いて考えました。アルバムの「軌跡」というイメージは出来上がっているわけだから、「彼に投げたらどういう切り口で詞を投げてくれるか」ということを考えつつ。
 もっと若い、自分が知らなかった子たちもいるから、ラップに詳しいやつに聞いて、「面白いやつがいたらリストあげてくれ」と頼んで、音源も聴いてみて。それで「いや、若すぎるな」とか、「フロウはいいんだけど、今回のアルバムじゃないな」という感じでは選びました。リストはすごい数になって、全部聴いて、その上で判断したんです。

djkrush

(左上から時計回り)リリースパーティでは一人15分ずつ、OMSBチプルソ呂布カルマMeisoの順番で登場

ーレーベルで言えばBPMMAJOR FORCE、いとうせいこうさんなどなど、ずっとその進化を見てこられたと思います。ラップの変換を、どう見られていますか?
KRUSH 難しいですね。あの頃とは時代背景も変わっているだろうし、机に並んでるものが、当時とは数が違う。環境が違いますよね。
 僕らの頃には、机の上に何も並んでなかった。足と手をつかって、自分で探しに行って、見つけて並べてみて、その上で「これがいいのか」って選んでいった。でも、今の時代は全部が一通り机の上に並んで「さあ、どうだ」って。
ー逆に広がり過ぎている?
KRUSH そういう、逆にわかんなくなっちゃうような中で育って、ラップをやってる子たちにとっては、みんなそこそこのモノができちゃうから、壁が高くなっちゃってるかもしれない。
 音づくりもそうだと思います。でも、そこで飛び抜けてすげえ奴がいるかという話で。
 昔はあんまりやる奴がいないから、それが目立っていました。だから、ラップやって言葉を吐いてる現在と、我々の、数が少なくて試行錯誤してる時代、どうなんでしょうね、、?
ー自分に置き換えると、高校時代からラップ音楽を聴いてきて、40歳を超えると、同世代のラップを聴いてホッとする感覚もあります。
KRUSH それはちょっとありますね(笑)。「やっと座れる」、「ムズムズしない」みたいな。
 ただそれも時代で、リズムに対して倍で刻んでいったり、かたやトラップみたいな、言葉を本当にポツン、ポツンと「こんな露骨な言葉を置いていくんだ」とか(笑)。そういう意味では、ヒップホップは枝分かれもして、良い悪いは置いておいて、進化はしていったのかなって。昔はそこまで需要もなかったから。
 たださっき言った、我々は昔のものを聴いて育ってきてるから、どこか安心できない感じはあります。80、90年代をリアルタイムで見て、育ってきた人たちは、話すとやっぱり「あの頃はよかった」って、おじさんたちになっちゃうというか(笑)。酒呑んでて話してても、「今最高だね」って言う人はたぶんいない。でも、「あんまり昔のことばっかり言ってても」というのもあるしね。
ーたぶんですが、「今最高だね」じゃないのは、今まで常にずっとそうだったんじゃないかと思います。
KRUSH 世界中でそうだよね。「次へ、次へ」って。結果としておかしなものが生まれるかもしれないけれど、それはまた勉強して、自分自身だってそうですよね。結局常に自分の足で歩いてきて、特に自分の場合は日本のヒップホップから離れちゃったので、ツルハシ使って掘りながら、自分で道をつくるところからやらないといけなかった。
 だから、その辺の結論としては「歩くしかない」。自分と向かい合って行くしかなかった。今までアルバムを何枚も出してきたけど、それは変わりませんね。
ー一応聞いておかねばという質問です。最新アルバム、出来はどうですか?
KRUSH 今の時点では「やりきって、よかったな」と。

djkrash

5lack志人RINO LATINA Ⅱと続き、最後は全員が名曲『証言』のトラックでマイクリレー。R-指定はスケジュール合わず

ー3ヶ月半でつくるということは、おのずと初期衝動の塊になるかと思います。
KRUSH そうですね。「よし!」と言えるものを、どんどんアルバムの中にパックしていくという。
 初期衝動からくる「躍動感」と、20年以上かかって、やっと実現して若干興奮した自分がいて、その気持ちも、20年前のKRUSH POSSEを「あの時MURO、ああだったよな」とか家で思い出しながら、日本語ラップをスピーカーから鳴らしつつ自分のビートをつけるという、そういう意味で、いろいろなことが含まれていますね。
ー節目でMUROさんを思い出される。
KRUSH しますよ。「あ、久々にゆっくり、日本語ラップが家のスピーカーから鳴ってる」みたいな(笑)。それで、MUROくんは次回以降の機会に「とっておこう」って(笑)。
 前に一回一緒にやってますしね。それはMUROくんのアルバムだったけど。
 お互い違う道を歩んできてるけど、歳もとってきたから、ヒップホップというルーツがお互いにあって、「どう自分を太くしてきた」みたいなところでいずれかち合わせたいというか、、30周年じゃ、みんないいおっさんになってるな(笑)。

全3回、最終回へ続く

krash

DJ KRUSH (ディージェイ・クラッシュ)

サウンドクリエーター/DJ。選曲・ミキシングに於いて抜群のセンスを持ち、サウンドプロダクションに於ける才能が、海外のクラブ・シーンでも高く評価されている。1992年からソロ活動を精力的に行い、日本で初めてターンテーブルを楽器として操るDJとして注目を浴びる。1994年に1stアルバム『KRUSH』をリリースし、現在までに9枚のソロ・アルバムと1枚のMIXアルバム、2枚のセルフリミックスアルバムをリリース。ソロ作品はいずれも国内外の様々なチャートの上位にランクイン。現在も年間、約30カ所以上のワールドツアーを敢行している。地域を越えて、多岐に渡り高い評価を得続けるインターナショナル・アーティスト。

 

(取材:平井有太)
2017.05.11 thu.


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