2018.07.02 Mon.

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6/18、RE100総括責任者サム・キミンスさんの記者会見。世界基準で再エネはとにかく安く、太陽光エネルギーの価格は、例えばアメリカでは日本のほぼ1/10

  日本で、再生可能エネルギー(以下、再エネ)を取り巻く状況が、急変している。
 ここ一ヶ月、ENECTは各種の再エネ系シンポジウム、記者会見、セミナー、フォーラムに出席し、それぞれの盛会ぶりを目撃してきた。それはこれまでの、特に”意識高い系”で大抵”反原発”な、”環境アクティビスト”が中心に集まっている(それも決して悪いことではなく)空気感から、「新しいステージに入った感覚」とでも表現すればよいだろうか。
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6/27に環境省で開催された、「企業版2℃目標フォーラム(第1回)」より。環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)に配慮した企業への投資が急増している

  世界の投資家たちが、再エネ関連ビジネスへの投資額を桁違いに増やし、その分野に投資が回るから株価が上がり、よりいっそう関連商品が出て消費者を刺激し、そういった一連の動きに一般消費者も気づき、さらなる注目に投資、購買と消費に繋がっていくサイクルが成立しはじめているのだ。
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6/27@環境省、「企業版2℃目標フォーラム(第1回)」でのPRI(責任投資原則)マーティン・スキャンケ議長。「正しい選択をすることで、社会はよくなる」

  日本における電力の”歴史的な”自由化から、2年超。
 誰もが毎日使う電力を、それまでは選択肢なく各地域の大電力会社に決められていた状況から、新たに経産省から免許を交付された400以上もの会社のどれかに切り替えたのは、法人と個人を合わせ、現状全体の約1割と言われている。それを多いと見るか、少ないと見るかはそれぞれだが、予々少ないと感じていた立場としては今、にわかに興奮を抑えられない状況だ。
 日本では311以降、原発に代わるものとして注目を集めた再エネだが、世界で期待を集めている理由は別にある。
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5/31@五反田・城南信用金庫、農業を新しい次元へ導く可能性「ソーラーシェアリング推進連盟設立記念シンポジウム」。代表理事、千葉エコ・エネさんの挨拶

  アメリカの現大統領など特異な例はさておき、世界の喫緊の課題は気候変動だ。
 このままいくと地球上の陸地数%は水没し、ハリケーンなど異常気象が各地で発生し、それに伴う民族大移動や食糧不足といった大混乱が起きて「私たちの暮らしが立ち行かなくなる」という認識は、広く共有されている。パリ協定はその象徴的な取り決めであるし、「私たちが暮らす環境そのものを守らねばならない」という命題は国、人種、世代の壁を超え、理屈抜きの現実である。
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5/31、満員の城南信用金庫、「ソーラーシェアリング推進連盟設立記念シンポジウム」でISEP所長・飯田哲也さん。日本全国で盛り上がる「ご当地エネルギー」

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6/10@日比谷、気候ネットワーク20周年記念フォーラム「加速する脱炭素革命」パタゴニア日本支社長・辻井隆行さん「環境破壊の85〜90%は企業によるもの」

  日本にとっては、2017年末に放送されたNHKスペシャル『”脱炭素革命”の衝撃』は、一つ明確なきっかけだったかもしれない。番組では「このままでは日本製品は、世界で買ってもらえなくなる」と、世界の現場で目の当たりにした現実を吐露されていた、RICOH執行役員・加藤茂夫氏の姿が印象的だった。そこから急激に盛り上がってきたように感じる日本の再エネの原動力の一つは、ロンドン発のイニシアティブ「RE100」だろう。
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現在日本からRE100に参加している7社。RE100総括責任者のサム・キミンスさん曰く、この夏の間に15社、2020年には50社まで参加企業が増えるとのこと

  RE100では、参加企業が自社で使うエネルギーを100%再エネ化する宣言をし、実践する。
 世界ではグーグルやフェイスブック、アップルなど先端企業からスターバックス、コカコーラ、BMW、H&M、ナイキといった巨大グローバル企業、そしてゴールドマン・サックス、HSBC、JPモルガン・チェースといった金融系企業、銀行などなど約140の企業が参加。
 日本からは現在(6/30/2018)、前述のRICOHをはじめASKUL、AEON、積水ハウス、大和ハウス、ワタミ、城南信用金庫の7社が参加している。それがさらに、この夏の間に15社まで増えると予測されているし、環境省が行政機関としては世界で初めて参加を表明した。
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6/27開催の「企業版2℃目標フォーラム(第1回)」にて。共催の環境省とCDPより、右は環境省・飯野暁さん、左はCDPシニアマネージャー・高瀬香絵さん

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6/10、気候ネットワーク20周年記念フォーラム「加速する脱炭素革命」。世界に浸透しつつあるSDGsについて講演をする、国連広報センター所長・根本かおるさん

  気候変動を乗り越え、サステナブル=持続可能な社会を目指す動きには、当然国連のような組織も積極的だ。持続可能な社会のための17の目標=GOALSを提示した「SDGs」は、国連本部でだけ入手できるSDGsバッジがネット上で高騰したり、にわかに流行の兆しを見せているほど。そんな状況下、特筆すべきは機関投資家たちがいよいよ動き出している事実だろう。
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6/10@日比谷、気候ネットワーク20周年記念フォーラム。サステナビリティの領域でリサーチとコンサルで活躍される(株)ニューラル夫馬賢治社長の報告より

  加えて「Climate Action100+」や、「THE INVESTOR AGENDA」といった、新しい投資家向けイニシアティブもそれぞれ2017年9月、2018年1月に始動している。
 それらイニシアティブは皆、平たく言えば、再エネはすでに「子どもたちのため」、「未来のため」という美辞麗句の枠を飛び出し、もちろん「美しい地球環境のため」であることは間違いないものの、それが今後、ビジネスを続けていく上で必須であることを提唱している。しかも現段階においては、街おこしなどと絡んだ発電や、どこで誰がどのように発電しているかが可視化されたエネルギーへの転換そのものが、大きなビジネスのポテンシャルを含んでいることを遂に投資家、企業が認識し、大きな額が加速度的に動き始めているのだ。
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6/19@銀座、セミナー「RE100企業に学ぶ、新しい電気の選び方」も満員。左から環境省、ワタミファーム&エナジー、積水ハウス、みんな電力、主催のオルタナ

  エネルギーは、国内だけでも約18兆円のマーケット。とっくに経済は頭打ち、少子高齢化の日本で、これほどまでにワクワクさせてくれる業界は他にあるだろうか。そしてエネルギーは誰の生活にも、どんな経済活動にも絶対必須な要素であり、それが資本主義に則ったビジネスであれ、個人の主義主張であれ、結果として起きた変革が社会構造の変革に直結する。
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6/27、「企業版2℃目標フォーラム(第1回)」でのみんな電力・大石英司代表。電力生産者の顔が見えるサービス、地域間連携、トレーサビリティはみんな電力だけ

  最後に念のため申し上げておくと、企業であろうが国であろうが、あらゆる組織をつくり上げているのは、とどのつまり個人だ。曲がりなりにも民主主義であるはずの日本社会において、理論上私たち一般市民が数としては最大派閥、つまり決定権を持っている。
 なぜか火力発電所の増設を進める、世界の趨勢を鑑みても、明後日の方向を向いてしまっている我が国の政府。
 だからこそ余計に、私たちはすでに与えられている権利を手に、それを十分に活用しながら、標榜する未来と社会をつくるべくエネルギーの世界に参加することが、すべてをより、面白くする。

 

 

 

精力的に取材を続けるENECT、来週月曜からは来日中、過密スケジュールの中30分いただいた
ザ・クライメート・グループ代表、RE100総括責任者のサム・キミンスさん独占インタビューをお届けします

 

(取材:平井有太)
2018.6.30 sat.


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