2017.10.30 Mon.

FRUE 

ザ・マスター・ミュージシャンズ・オブ・ジャジューカはまず11月3日(金)と4日(土)、静岡県掛川市、つま恋リゾート彩の郷で開催される音楽フェスに登場する

  ジャジューカが初来日する。
 中心となって招聘したのは、静岡県掛川市で開催されるFESTIVAL de FRUE。掛川に続く渋谷での公演は、2012年から毎年モロッコのジャジューカ村に通っている赤塚りえ子さん、渡邊未帆さん、脇田亘さんと仲間たちが企画した。お互いに影響を与え合いながら今に至るりえ子さん、渡邊さん、脇田さんの関係については、下に続く原稿に詳しい。
 ジャジューカとは何か。
 ローリング・ストーンズの初期メンバーであるブライアン・ジョーンズ(故人)をはじめ、世界的なカルチャーの要人たちを虜にしてきた、モロッコの小さな村で開催される、50名限定の音楽祭で演奏される儀礼音楽。
 感電するほどのエレクトロニック・ミュージック一辺倒だったりえ子さんがその先で到達した、ジャジューカの魅力に迫る。
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撮影:渡邊未帆   ジャジューカ村への入り口

—初めてジャジューカ村に行ったのはいつですか?
赤塚 2012年です。ジャジューカのアルバムを知ったのが2011年でした。
 私は本当に、ロックを通ってないので、ブライアン・ジョーンズとか(ローリング)ストーンズとかを聴いてきたわけじゃないし、曲くらいは知っていますが、アルバムも一枚も持っていませんでした。
 2009年末に、たまたまウチの夫が誘ってくれてモロッコに行って、その時は地図上でどこにモロッコがあるのかもしらないくらい。でも現地に行ってはまったというか、それからモロッコの音楽を掘るようになったんです。
 そうしたらここにいる脇田が、「そういえば、ブライアン・ジョーンズがモロッコ音楽のアルバムを出してたよ」って。それが2011年でした。
脇田 それがちょうど、震災が起きた頃で。
赤塚 私は純粋にモロッコ音楽が好きだから、「それ聴きたい!」と思って。でも、脇田はそのCDを棚で見つけられなかったんです。そうしたら震災の時、その棚が倒れて、倒れたCDの山の一番上にジャジューカのアルバムが乗ってたそうです。
 だから「お告げ」だったのかも(笑)。
—ジャジューカ村に行くことは、そのように「呼ばれるもの」とも聞きます。
赤塚 迷ったりとかして、結局着けなかった人がいるとか、村を目指して行って行けなくて、騙されて帰ってきたという話は聞きますね。
 それで私は、2011年に「絶対行きたい」となって、でも情報があまりないですから、とにかく一生懸命ネットで調べてたら、村でフェスがあることを知ったんです。2008年がブライアン・ジョーンズが村を訪れた40周年を記念して始まったお祭りで、彼らは「ブライアン・ジョーンズが自分たちを世界に広めてくれた」と感じているようです。
—りえ子さんはそれまで、エレクトロニック・ミュージック漬けだったと聞いています。
赤塚 若い時にイギリスにいたので、グラストンベリーとかラヴ・パレードとかにも行ったし、とにかくずっと電気が通った音、ダンス・ミュージックが大好きでした。それこそ聴いていて感電しそうなくらいの音楽が好きで、だから初めてジャジューカを聴いた時は、完全にダンスの耳で聴いていたというか。
 繰り返すリズムとか、自然に耳と身体がジャジューカをそう聴いていたんだと思います。ロックを通ってる私の友人たちは、実は当たり前にジャジューカを知っていましたけど。
—でも、知っていても、じゃあ「そこまでそれを好むのか?」というと、そうでもないような気もします。
赤塚 それで2012年に、サラーム海上さんとDOMMUNEで番組をやったんです。実際に行ってきたフェスのレポートみたいな感じで、それでその放送中にフェスに申し込んできたのが、今ここにいる(渡邊)未帆ちゃんだったんです。「これはヤバい」って。
—もともとお知り合いはわけではない?
赤塚 次の年に、村で初めて会いました。
 だから今日は一番の火元責任者(脇田)と私と、その結果、DOMMUNEの放送で真っ先に火を付けられた彼女と一緒で、私たちはそれ以来ずっと通っています。
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左から渡邊未帆さん、赤塚りえ子さん、鼎談が終わってから合流された山崎春美さん、フジオ・プロ勤務でりえ子さんとは20年来のお付き合いという脇田亘さん

脇田 ちょっと震災の時の話をさせてもらうと、その時赤塚さんと、あまりにもすごい状況過ぎて、「何を聴いていいのかわからないよね?」という話はしたんです。
赤塚 震災の直後、音楽が聴けなかったんです。
脇田 それがあって、ジャジューカに案外スッと入っていけたのかもしれない。
赤塚 一回リセットされたというか、、
脇田 価値観的なものが。
赤塚 真っ白になって、精神的に音楽が聴けなくなって、確かに、そこにスポンと入ったのかもしれない。
—導かれるように、、
赤塚 私はいわゆる、前奏があって歌がはじまって、間奏と2番があってみたいな音楽に聴き慣れてないわけです。でも、ダンス・ミュージックの耳にはスッと入ってきて、さらに驚いたのは、生音でここまで人を「トランスさせる」という。
 そういう音楽遍歴が、(渡邊)未帆ちゃんはもっと面白いんです。彼女は芸大の音楽楽理の博士で、そんな彼女が、、
渡邊 ジャジューカを知って、価値観をひっくり返されました。芸大の楽理科とは、西洋や日本やさまざまな地域の音楽理論や音楽史を学ぶ学部で、その後私は大学院で現代音楽を専攻したのですが、、
赤塚 そんな彼女がジャジューカのDOMMUNE放送を聴いて、、
渡邊 人生が変わっちゃった(笑)。
 DOMMUNEで聴いて、まず100%音にやられました。そして実際に村に行って聴いたら、さらにやられて、もう体を音に委ねるのみ。しばらく音楽理論とか何とかを忘れて、何もできぬままきました。とにかくフェスの現場では感じ入ることに集中したくて。
 それで今回、ジャジューカ本を作るということもあってようやく5年目にして、そのリズムやメロディや構造やダイナミズムを聴くことに挑戦して、、
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  ただただ感じることも素晴らしかったけれど、なぜこのような音楽になるのかを理知的に捉えようとしてもやっぱり、素晴らしい!
 一体どうなっているんでしょうか。
 あの、皆で、指揮者や作曲家の存在もなしに、うねりながら作られていく巨大な織物のような音楽は!
脇田 私はストーンズあがりです。ストーンズあがりなんですが、あれはストーンズじゃないというか、結構最近の、アメリカでのスタジアムツアーのストーンズを見ていても、「ここにブライアン・ジョーンズはいれないな」と思っていました。
 だから、そういう「ブライアン・ジョーンズって何なんだ?」って。
—もともとストーンズの中でも、特化して音を突き詰める、職人肌な方だった。
脇田 その矛先がブルースだったり、ジャジューカだったわけです。そして、ブルースの方は結果的に「ローリングストーンズ」というブランドを生むにいたり、その彼がもう一つ興味を持っていた「ジャジューカって何なんだ?」と。
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撮影:渡邊未帆

ウィリアム・バロウズアレン・ギンズバーグといった、「ビート派」と呼ばれる方々もジャジューカに関わっています。
赤塚 結局人を「トランス」させる、しかも渡邊さんのような、これだけ音楽を勉強していた人が一発でハマる音楽ですから。
渡邊 バロウズの最初のカットアップ作品と言われている『爆発した切符』(1979、サンリオSF文庫)にジャジューカ村の風景が描写されているのと、バロウズがその後、ブライオン・ガイシンと、テープレコーダーで録音した音のカットアップを始めた時もジャジューカの音が素材にされていることから、アヴァンギャルド・シーンなどにカルト的に広がって行ったということはあるかもしれません。
 そのガイシンという人物は、ジャジューカ村出身の画家モハメド・ハムリと親しく、生涯ジャジューカを愛していたようです。バロウズはジャジューカ村から100キロほど北のモロッコ北端の都市タンジェに住んでいた時期があり、ギンズバーグはそこに遊びに行ったりしていたようです。
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撮影:渡邊未帆

赤塚 実際に聴いた方々はみんな驚いたといいます。音楽が全然違うというか、音圧というか、もちろん私が世界の音を聴き尽くしているなんてことはないんですが、ものすごく特殊な音楽だと思います。
 私は耳が電気音の人だから、すぐエレクトロニック・ミュージックに繋げちゃうんですけど、ジャジューカを現地で聴いていると、ピークで音がエレクトロニックな、もちろん打ち込みみたいな音ではないんだけど、電気っぽい音になるというか、あれは到底人間業とは思えなくて、、
脇田 私は前回音に関して研究してみたんですけど、例えばディレイってエフェクターがあるじゃないですか。あれをアナログで、一人一人が、強弱を含めてやるんです。
赤塚 そうそう。あと、生フェイジングもかかりますね。
脇田 そこは、ダブのエンジニアだとそういうことを一人で卓でコントロールするのを、タッグで団結して、さらに生でやっている恐ろしさといいますか、、
—それは村で受け継がれているノウハウなんでしょうか?
渡邊 村とその周辺で、基本的には代々親から子どもに受け継がれていく。
赤塚 実際、理屈超えちゃうんですよ。それはダンスミュージックもそうだと思うんですが、耳じゃなくて、フロアで身体で聴く感覚というか、、
—ジャジューカにはそもそも何人いるんですか?
赤塚 今回来日するのは13人で、一人はブージュルード役のダンサーです。演奏者12人中太鼓が4人、残りが木製のラッパというか、チャルメラみたいな音を出す「ガイタ」という楽器を演奏するんですが、それがものすごいパワフルなんです。
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撮影:脇田亘   炎をバックにした、ブージュルードの影。ブージュルードの全貌には、後編で迫る

 でも、だからといってうるさい音ではなく、クリアーで、きれいなんですが、ただ、ものすごくパワフルなんです。不思議です。
後編に続く(明日更新!)

 

(取材:平井有太)
2017.10.18 thu.


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