2017.06.02 Fri.

  布製ボディの、カワイイ超小型電気自動車。初めての「Lab.」カテゴリーに登場するのは、「乗り物」から「NO」をとった、rimOnO(リモノ)だ。謳われている「人にやさしい街を実現する」可能性は、このカワイイ車体のどこに潜んでいるのだろう。
 rimOnOを仕掛けるのは、代表取締役であり元経産官僚の伊藤慎介氏、クリエイティブディレクターの根津孝太氏、開発パートナーとしても名を連ねるドリームスデザイン代表の奥村康之氏。パートナーには他に三井化学や帝人フロンティア、Rolandと、業種は違えど本格派な名前が並び、その底知れぬ可能性が見え隠れする。
 率直に驚いたのは、公道走行実現のため、パルコのクラウドファンディング・BOOSTERに設定された目標額。しかしそこには考え尽くされた戦略、込められた暖かな想いがあった。
 伊藤氏とパルコが揃った全3回のインタビュー。過疎の地域や下町から、優しく日本を、もしかしたら世界をも変えていくかもしれないrimOnOの魅力をお届けします。

 

rimono

ー現時点でクラウドファンディングの目標額が4000万円、残り50日という状況でした。
伊藤 そうですね、金額的にはちょっと無謀なチャレンジになっています(笑)。
 金額の部分含め、パルコの鳥当部長とはいろいろ議論しながらやってきたんですが、乗り物の場合はと膨大な開発費を必要とするので、ちょっとした日常品をつくることと同じ規模では取り組めないという事情があります。
 世の中の多くの人は、乗り物をつくることが実際には「どれほど大変であるか」ということを十分に認知していただいていなくて、こういう金額にすることによってその大変さを少しでも理解していただきたいという気持ちもあります。
 トヨタ自動車の若い人たちが中心となって取り組んでいる「空飛ぶクルマ」というプロジェクトがあるのですが、先日、日経新聞にそのプロジェクトに関する記事が掲載されて際に書かれていた支援額に驚きました。3年間で4000万円というのです。正直に言うと、乗り物を作る金額としてはあまりにも少なすぎると思います。人の命を預かって走るrimOnOのような乗り物であっても本来は億単位のお金が必要ではありますが、更に空を飛んで地上から離れる乗り物ですので、数十億、百億が必要かもしれません。
 どうしてそれだけのお金が必要かと言うと、商品として売れる手前の段階で数々の信頼性の評価をしたり、様々な規制にしばられている産業でもあるので、規制で決められた基準をクリアしたり、量産する際には量産に向けた初期投資が必要になってきます。部品それぞれに金型というものが必要であり、その金型投資を回収するために万台単位で量産しなければならないというのがものづくりにおける常識です。買う側の立場の人たちはそういう実情を普段は意識することはないですよね。
ー消費者の意識喚起までが、プロジェクトの意味合いに入っている。
伊藤 4000万円は金額が大きすぎるので、もう少し金額を減らした提案が出来ないかと我々もいろいろ考えたんですが、仮にオリジナルのTシャツをつくって、そのTシャツをリターンとして400万円をクラウドファンディングで集めるとした場合、いったいその400万円は「何のために集めて、何に使うのか?」と目的がはっきりしなくなってしまうんですよね。
 今回設定した4000万円という目標金額も、必要な開発費用全体からすると全く十分ではないのですが、今のプロトタイプはナンバーもありません。公道も走れませんので、まずはその課題をクリアして多くの皆さんに乗っていただいたり、「公道を走るrimOnOの姿」を見ていただけるとなると「それなりのインパクトがあるのではないか」ということで、公道走行試験車の開発と製作に必要な資金として設定しました。

rimono

ーパルコさんの想い、そして勝算はいかがでしょう?
パルコ 伊藤さんの想いとかなりシンクロしてくる部分があります。私たちはクラウドファンディングを立ち上げて2年弱ですが、国内でも同じ事業者は相当数いらっしゃるんですね。
ー正直私も、パルコさんがやられているのは知りませんでした。
パルコ そういう中で細々とやっているのですが(笑)、他の99%の事業者の皆さんは本業でやられているので、あまりリアルな拠点を持っていないんです。パルコの場合は国内に商業施設をいくつも持ち、そこを上手く活用していろいろなプロジェクトのお手伝いさせていただくことで「特徴を打ち出せるかな」ということがあります。だから今回は最初の段階から、「試作車をいろんなパルコに持って行きましょう!」と提案してきました。「ネットとリアルを連動させて、一般のお客さんにアピールしていきましょう」と。
 それに、ネットだけで「ボディが柔らか」と言っても、実際に触ってもらうのと全然違いますので、その意味合いからも、このプロジェクトについては「リアルの活用が非常に効果的だな」と思っています。
 もう一つ、クラウドファンディングは基本的にはCtoCのビジネスに近い。ですので、「個人から集める」というのが大半で実際に3000円の個人向けからあるんですが、今回は100万円以上のコースを3つつくらせていただきました。100万と300万、500万をつくり、それらは企業向けということになります。伊藤さんがものづくりを進められている中で、バッテリー他部品もそれぞれやらなければいけないので、今回の告知で「その技術、ウチにあるから一緒にやらない?」と企業さんに手を上げていただくきっかけになるような、そう考えた側面もあります。
 実際に支援の大半は、公道走行車ができた時に企業名を入れて走るという宣伝効果の部分です。「500万は高い」とか「もっと車全面で」と言ったご意見も想定しながら、本当は「技術を持っている方々に集まっていただけないか」という想いが強くあります。パルコはこれまで80くらいのプロジェクトをやってきましたが、初めて、企業向けのリターンを設定したんです。
ー実際に反応はいかがですか?
パルコ 少しずつですね。こちらからアプローチもしながら、私たちの取り組みをお伝えして、ただ我々だけで行ってもリアリティがないものなので、伊藤社長と一緒に2回り目をはじめているところです。

rimono

伊藤 rimOnOは明日(5月24日)から「人とくるまのテクノロジー展」という展示会に出展します。大変ありがたいことにこの春は展示ができる機会に恵まれており、4月に1回、5月に2回、6月に2回という感じで続くので、普段では我々と接点のない会社さんとの接点を持ったり、展示会以外では講演会などでもお話させていただきながら、仲間づくりをさせていただけないかと思っているところです。
 実はrimOnOが目指していく方向性として「地産地消でエネルギーをまかなう社会」があり、そういうことを考えていらっしゃるエネルギー会社さんや地方自治体はたくさんいらっしゃるのではないかと思っています。
 その背景としては、メガソーラーの買取価格が徐々に厳しくなっていることや、系統の関係で買取が難しくなってきていることがあり、いずれは地元で発電した電気を地元で使っていかざるをえないと思っている方が増えてきているように思います。また、東日本大震災後には原発立地地域などで、これまでの過剰な原発依存から脱却し出来る限り原発に依存しないで地域経済を回していきたいとの声が大きくなってきており、その出口として「地産地消のエネルギーシステムをつくりたい」と取り組もうとしている地域の話も耳にします。
 ある神奈川のエネルギー会社では、計画停電が行われたことで観光客が激減し、地元経済に計り知れない影響があったとの話を伺いました。そこで、彼らは自分たちで電気をつくり、その電気で施設やサービスに必要となる「最低限のエネルギーをまかなえるようにしたい」という強い思いがあり、その延長線上として乗り物も電気になれば自分たちが作りだした電気でまかなえるようになると考えています。
 そういう話を伺うと、我々の電気自動車は地産地消のエネルギーシステムと高い親和性があるのではないかと思うんです。

rimono

ーお話を聞いていて、アメリカでTESLAという会社と、そのオーナーであるイーロン・マスク氏の標榜する社会を思い出しました。
伊藤 実はこういう構想はTESLAが出てくる前から考えていたことなんです。経産官僚をやっていた頃、「バッテリーがエネルギー社会を変えていくだろう」と思っていました。そこに半導体とかインターネットなどの技術が重なれば「インターネットで起きたイノベーションと同等のことがエネルギーの世界でも起こせるんじゃないか」と思い、日本版スマートグリッドのプロジェクトを企画立案しました。
 新しいエネルギーシステムにおいて一番のキーテクノロジー、キーコンポーネントになるのがバッテリーであり、バッテリーを中心として車やエネルギーシステムを構築していくという構想でした。ただし、バッテリーにとって手間がかかるのが「充電」という作業です。車をいちいちケーブルに繋がないといけないとなると面倒なので、その作業を減らす工夫が求められます。
 そこで、交換型のバッテリーシステムみたいなものが広がれば、充電しておいたバッテリーを空になったバッテリーと交換することが出来ますし、そのバッテリーを使って電気自動車が走ることが出来れば、充電の必要もなくなるわけです。
そういう仕組みが出来上がれば、ソーラーが系統に繋がせてもらえない場合にも発電した電力をバッテリーに貯めることが可能となり、系統の問題の対策にもつながります。
 じゃあ、そういう交換型のバッテリーを利用して走る電気自動車を作ろうとすると、TESLAみたいな「航続距離500キロ走る」超大型車では現実味がないんです。そもそも大量のバッテリーを搭載していますので、それを取り外すこと自体が大変な作業になります。過去にイスラエル発のベンチャーであるBetter Placeという会社がトライしたのですが、車両からバッテリーを取り外す仕組みが戦闘機のミサイル落下装置と同じくらいのものすごく大変な仕組みになってしまいました。
 したがって、交換式のバッテリーはrimOnOのような小型モビリティにして「なるべく軽量なバッテリーを使う」という前提じゃないと成立しないと思うんです。そういうこともあり、大型車から取り組んでいるTESLAに対して、我々は自転車の延長線上くらいの軽量な乗り物からスタートしようとしているわけです。

rimono

 rimOnOのような小型モビリティは、近所を巡る用途を前提としているので、運転をあきらめざるを得ない高齢者の方にとっての代替の移動手段にもなります。そもそもバッテリーはガソリンと比べてエネルギー密度が低いので、電気自動車の航続距離を伸ばして遠出を可能にしようとすると、普段は「重いバッテリーを運ぶ」ことになってしまいエコではなくなってしまいます。ですので、電気自動車は小型車でちょこちょこ近場を移動する使い方が理想的なのですが、そのことと地産地消のエネルギーシステムには親和性があると考えています。

 

(取材:平井有太)
2017.05.23 tue.

 

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